『無限列車編』は果たして鬼滅でも面白い方なのか?
遂に『千と千尋の神隠し』の興収316億円を抜き、384億円という前人未到の大記録を打ち出し、日本国内における映画興行収入のトップになった、劇場版 鬼滅の刃『無限列車編』であるが、どこか冷めている自分がいる。ちなみに、それでも熱心な鬼滅ファンだったりする。ジブリ擁護者でもないので、興収記録が塗り替えられようが、正直どうでもいい。ただ、この『無限列車編』を観ても、何も感じなかった者としては、少々世間が騒ぎすぎてる気がして、絶対に感動した、面白かったと言わなければならない同調圧力すら感じ、薄気味悪さまで感じている。コロナ禍において、唯一の明るいニュースだと思えば、決して嬉しくないわけでもないが、過大評価である感じは否めない。
それは、この映画を観た大半の人が口を揃えて言う、煉獄杏寿郎が叫ぶ人間賛歌ともとれる「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」などの台詞のどっかで聞いた感にピクリとも反応しなかった点など、いくつも理由はある。
映画史における強烈なエポックは生み出せてない
例えば、ジブリが反文明的なメッセージと実写映画にも劣らない壮大な脚本で、アニメ映画の底上げを行ったり、未曾有の自然災害を描きながらもJ-POPを大胆に取り入れ日本のポップカルチャーとして斬新さを提示した新海誠作品など、日本アニメ映画の強烈なエポックと比べると、そのテーマ性や革新性に乏しく少年漫画の域から出られていないと思われる。
無限列車は序の口!面白くなるのは次の遊郭編から!
そんなこと言っても、少年漫画なんだから仕方ないじゃんと言われてしまいそうなので、漫画原作を読破している者から言わせて頂くと、この『無限列車編』はまだまだ序の口であり、鬼滅がおもしろくなるのはこれからなのだ。特に次の『遊郭編』こそダイナミックな展開で、劇場作品としてのスケールを持ち合わせていると思える。むしろ、無限列車と煉獄までをアニメでやり、『遊郭編』を映画にすべきだったとすら感じるくらいだ。今後の展開は未定ではあるが、映画を連発すれば、飽和期は早かろう。TVアニメ化と予測されるが、勿体無い。
ぶっちゃけ、無限列車編って面白いか?
列車内で何か特殊なことが起きてるわけでもないし、列車でなくてもいいしとか、ずっと思っていたんだけどね。夢を操る鬼も、そんなには魅力的なヴィランでないし。『刀鍛冶の里編』『無限城編』『最終決戦』と怒涛の展開を控える鬼滅が面白くなるのは、これからなのだ! こんな序盤で騒ぐには、少し気が早いというか、必ず訪れる飽きに耐えかね、肝心の部分を観ない人も出てくる危惧もある。
まるでAKB?正々堂々と勝負してない特典商法
あとは、事あるごとに配布された特典が気に入らない。映画に特典を付けたって良いが、今回は数がえげつなかった。夏に公開された『無限列車編』だが、年末でも映画館のロビーは込み合い、そのほとんどが鬼滅待ちの列。しかも、皆同じイラストが描かれたシートを持っていた。AKB48が握手券を付けてCD売り上げを伸ばしていたことにも、批判が飛んでいたが、自分にはそれと全く同じのように思える。特典付きで、何としてでも『千と千尋』を超えるという邪道的な手法を感じ、それは流石に品位が無いよと(儲かれば品位もへったくれもないのは分かるが)感じた次第である。だってさ、実際に鬼滅は作品の質で勝負できるんだから。
とりあえず、煉獄よりも宇随天元な者としては、次の『遊郭編』のアニメ化が楽しみで仕方ない。ストーリーの面白さもだが、吉原の緻密な絵が、ufotableのハイスキルによってどう表現されるか、それだけでもワクワクドキドキが止まらない。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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