劇場公開をしようと思ったけど、新型コロナの影響で権利問題などで揉めに揉めた結果「配信しちゃえ!」ということでネトフリ配信となったらしい『狩りの時間』。けど、それは正解だったと思われる。いま日本で最も話題のネトフリ作品が、韓国ドラマ「愛の不時着」であるという。中高生までハマっているとか。何だかんだで日本人は韓流好きだからだ。
日本でも韓国作品を輸入してリメイクすることが多いだけに、それだけ質の高い娯楽作が多いのかなと思うのだけども、この『狩りの時間』も日本でリメイクしそうな予感だ。特に若手俳優が主人公だけに、イケメン俳優をやたら起用したがる日本映画にはうってつけなのではないか?
そう、この映画は若手俳優が頑張っていて、今年のオスカー作品賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』の長男も出ているというので、興味惹かれて観てみた(主人公の俳優がどう見ても好青年でチンピラに見えないのはどうかなと思ったが、パラサイト長男もひ弱そうだし)。いや、面白い!人生の逆転を狙った若者たちが、賭博強盗をしたことで、謎の射撃犯に追われるというサスペンス。単純に言えば鬼ごっこ、煽るだけ煽るハリウッド的演出も巧みで、逃亡撃はハラハラドキドキしっぱなしだった。
しかし、途中から緊張感も失速。演出が単調だけに集中力が持たなかった。静寂の中の銃撃戦で思い出すのは『スターリングラード』だ。ジュウド・ロウ主演の傑作、静寂が演出に活かされていたが、この『狩りの時間』は緊張とは真逆の飽和を招いた。演出の差であろう。襲撃犯の狙いが分からないからだ。中盤で主人公たちは追いつかれてしまう。絶体絶命になるのだが、何故か「5分間だけ猶予をやる」と逃がす展開で興醒め。捕まったらいかんのよね。この手の追う追われる系作品は、徹底的に逃げていなければならない。そういう意味でもハリソン・フォードの『逃亡者』も、ディカプリオの『レヴェナント:蘇えりし者』も秀逸だった。
あとは、モノクロに近い薄暗さや深紅に染まった映像もディストピア感が出ていて良かったと思ってるのだが現代社会の光景と何ら変わりがなく、ウォンの価値が下がった荒廃世界というファンタジー性が活かされていないのも残念だ。韓国映画は暗いというイメージが強い。滅多に見ないのだが、最近見た『新感染』も『パラサイト』もバッドエンドが多い。カタルシスを感じられない、スッキリしない後味の悪さが残るのは想定内だった。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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