初年から皆勤賞のフェス。過去の8年を思い返しても最大の困難な状況だというのは一目瞭然。昨年中止となった「VIVA LA ROCK」今年も変異種の感染拡大により開催が危ぶまれていたが、おそらく主催する側も悩みに悩まれた結果、開催するという英断を下した。悩んだのは主催側だけではない参加する側も、緊急事態宣言下での外出自粛などが発令されていることから、参加を見送った人も多かったという。誰もが何が正解か分からない中、それでも開催されたビバラで感じたものを素直に書き記したい。
今年のビバラは音楽を止めない気迫を感じた
まずは5/2の感想
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フレデリック
リリース直後の新曲「名悪役」から聴かせる責めの姿勢が、どことなく有観客ライヴに飢えたロックバンドの表現欲の解放に思えて見入ってしまった。「ナイトステップ」「Wake me up」「リリリピート」などお馴染みの曲で流れていき、いつもなら定番だなで片付けてしまうラストの「オドループ」で、会場中のほぼ観客全員が踊っていた光景は、確かに、あの日ライヴ会場にあったはずの光景で、その一体感が心地良く、何よりも嬉しくて涙腺が緩んだ。
クリープハイプ
尾崎世界観(Vo/Gt)が芥川賞候補となった後に初めて見るステージ。「どうしても、やりたくて仕方がなくて、この日を待ち望んで、やるからには、何か残したいと思います。ライヴじゃなくてセックスのことね?」と尾崎節は変わらない。過去に主催者である鹿野氏と揉めたことを振り返りながらも、ビバラのステージに立ったクリープの存在は、この日、すこぶるエモーショナルで、掛け声の無い「HE IS MINE」からラストの「栞」まで、胸の奥底をギュッと掴む熱量もいつもより増していた。
My Hair is Bad
三週間前、同じ会場でワンマンツアー最終日の公演を観たばかりだった。特に音楽が止まった現状を憂うわけでも無く、バンドマンとしての宿命を果たすように叫び続けた椎木(Vo/Gt)。そのテンションを引きずるようにビバラに挑んでいた気がする。しょっぱなから「アフターアワー」でトップギアで駆け出す三人。圧巻は「フロムナウオン」前の即興弾き語り、予定調和のないお馴染みのパートだが、この日、椎木は「大切なモノを守れる人間になれ」と言った。人との距離感が掴みづらい時代に心にズシリと言葉の重みが響く。新曲は昨年末リリースの「味方」だけに留まったが、生きにくい「今」を生きる僕らの代弁者として、「今」のバンドの姿そのものを見せてくれたマイヘアに感謝。
UNISON SQARE GARDEN
余計なMCは挟まず、難易度の高い楽曲を立て続けにプレイするのだから毎回脱帽してしまう。久々のフェスで純度100%のユニゾンを見せることに前のめりな感じが、「天国と地獄」「シュガーソングとビターステップ」「桜のあと」と続く楽曲たちから伝わってくる。いきなりフルスロットル。贅沢なセトリ。斎藤(Vo/Gt)は相変わらず王子オーラ全開で、田淵(Ba)は相変わらず暴れて、ラスト前「君の瞳に恋してない」の時にはポップで煌びやかな感情に包まれていた、これがユニゾンマジック。ラストの「春が来てぼくら」は、この閉塞した日の終演を願う希望の歌として際立って聴こえた。
SUPER BEAVER
前回のビバラで初めて彼らを観て度肝を抜かされた。たった僅か二年前のことである。そこから短期間で今や邦楽ロック界隈ではトップに君臨するかのような勢いのビーバー。この日のトリを務める。彼らは紆余曲折を得た特異な経歴を持つ、キャリアが長いだけあって既に完成されている段階でブレイクを果たした。しかし、そこから更に進化を遂げたかのようなオーラをまとって現れた。「正攻法」から幕を開けたステージは、いつもと変わらず、愛に溢れ、多くを肯定し、包み込む、彼らにとって正攻法のパフォーマンスだった。「予感」「アイラブユー」で底知れぬポジティブな感情を奮い立たせてくれた後、ラスト演奏された「さよなら絶望」は彼らの現代へのメッセージと受け止めた。今年は秋に大規模ツアーが待ち構えている。期待しかない。
ここからは5/3の感想
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レキシ
この日は朝からチラホラ光る稲穂が会場で見えていたが、冒頭から「きらきら武士」で幕が開くなり、会場が稲穂できらめく。「他の人の時に稲穂振るの辞めなさいよ?次の藤井君の時とか。“その稲穂、何なん”って言われるから(藤井風の楽曲「何なんw」から引用)」と会場を笑わしにかかる。本来は昨年中止になったビバラで映画公開と同時に披露されるはずだっただろう、クレヨンしんちゃん昨年の映画主題歌「ギガアイシテル」も満を持して披露。「狩りから稲作へ」ではお馴染みの脱線でSMAPの「夜空ノムコウ」で♪あれから~僕たちは~稲穂を信じて来れたかな~と歌えば、「青いイナズマ」まで飛び出す自由さ。時間がいつもより短く急ぎ足であったが、最後は着ぐるみのイルカと登場した「KMTR645」で大盛り上がりで幕を閉じる、問答無用に楽しかった。
藤井風
人は34歳で新しい音楽への興味を失うという研究結果がある噂を聞いたことがある。アラフォーでとうに34歳など過ぎた自分が、それでも新しい音楽への探究心を捨てずにいれたことを証明してくれたのが藤井風だった。ちょっと物が違いすぎて、正直その時は的確な表現が見つからなかった。そのくらい圧倒された、本物感。リハで発声代わりに声を出せば、そこはもうフェス会場ではなく、彼の独壇場のようだった。一気に引き込まれる、その源は色気に他ならない。この色気とはルックス云々とか、そんな単純なことではなく、グルーヴから何から何まで洗練されているってこと。「優しさ」「さよならべいべ」は歌謡曲的だし、「キリがないから」は最先端のエレクトロニカ、新曲「きらり」も「何なんw」も王道R&Bながらサビのキャッチーさが愛おしい、「旅路」「帰ろう」は言わずもがな全てがセクシー。「青春病」ではマイケル・ジャクソンの息継ぎ時に出る「アゥッ」をJ-POP取り入れたのは、これはもぅ革命である(これ以上は長くなるのでまたの機会)。彼は無駄に時代を先行しようとしてない、今まで自身が生きてきた中で得た、歌謡曲、ジャズ、R&B、ダンスミュージックなどを咀嚼し独自に解釈してみせた、正にオリジナル。歌唱力の高さも、愛嬌あるキャラも、圧倒的な世界観も、J-POPに縛られない最先端のサウンド作りも全てが革新的で、宇多田ヒカル以来の衝撃、彼の存在は日本音楽界の革命と言いたい。
コロナ禍でフェスを開催する難しさと垣間見えた希望
ちょっと長くなってしまった。正直、ワクチン接種の遅れから変異種の拡大が速度感を増している中で、屋内という限定的な空間での万人単位の移動は、どうしてもアリーナ通路や廊下で三密状態が何度も見られたし、座席を空けずに座る人や、マスクを外す者、黙食を全くしない者、隠れて飲酒をする者など、一部のマナー違反者も目立ったことから、完璧な対策が貫かれたとは言い難い。しかし、大半の人が守っていたのは事実であるし、タイミングの問題はあるにせよ、音楽を止めない姿勢と、有事で開催させた事実は、絶対に今後のイベント開催のひとつの指標になったことは評価に値すると思う。来年こそ何も気にせず、全身で音楽を感じたい。そんな日が早く来ることを祈っている。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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