映画レビュー

【映画鑑賞日記】マグニフィセント・セブン

http://www.magnificent7.jp/

原作があまりに名作だとハードル高くて困るよね?笑
『七人の侍』を西洋の概念でRemakeして成功した『荒野の七人』のRemakeの本作、いわばRe×2make!時代性も近ければ、映画制作を取り巻く環境も違う。
が、変わらないのが「正義の鉄槌」という点。理不尽な力によって虐げられる弱者を助けるヒロイズム。これには相変わらず痺れる。
何故、この普遍的なテーマがいつになっても支持されるかといえば、これこそ民意だからではないか。先進国の司法は「復讐」を是としない。死刑制度廃止を求める風潮すらあって呆れる。9.11以降の米国が「復讐」を描くことは、イラク戦争の肯定になると批判されがちで慎む風潮もある。しかし、劇中で助けを乞う女性は言う「(復讐でなく)正義を」と。
そう、要は正義感の問題なのだ。悪人の人権だとか、倫理など介さない、悪い奴は相応の罰を与えるという勧善懲悪こそ、この映画の本筋であり、最大のカタルシスだ!
何にせよD・ワシントンがこれ以上に無いくらい格好良い!
誰しもが支持する名優が悪を制する爽快感……これぞ映画の本質を久しぶりに観た気がして、興奮した。

『七人の侍』が無私欲による意気で、『荒野の七人』が己の中の大義名分で戦いに挑んだが、この映画の七人には、そういった細かな心理描写すらない。アップテンポな物語進行の中で、ならず者達が自然と集まる。まるで、ヒーローの宿命を背負ったアベンジャーズの如く。そこに理由付けなどない。大義名分のようなものを重要視する古い映画ファンなら物足りないと感じるだろうが、これも現代風だと個人的には消化する。

『七人の侍』で志村喬が泥まみれになった姿、『荒野の七人』で砂埃が舞っていた様からすれば、土臭さが感じられなかったが、それもスタイリッシュとすると擁護し過ぎと批判を受けるかも知れない。けど、言わば、アクションが得意なフークア監督が撮っていると思えば、最初から期待する視点がズレるだろう。
そりゃ、原作の方がいいなんて、言ったらキリがない。
肝心なのは、利他主義の美学とヒロイズムをどこまで振り切って描けるかどうか、現代でも正義の鉄槌の必要性を説くところに意義がある。そういう開き直りさえあれば、どれだけカッコ良く、どれだけポップに、現代に「荒野の七人イズム」を大衆娯楽として成立させるか、この映画が、その課題を十分に果たせていたと思うに違いない。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 『娼年』の実写化で性に真剣に向き合った監督と、素っ裸で腰振りまくった松坂桃李に敬…
  2. UVERworldの男祭り遂に東京ドーム実現!でも女性CREWからブーイング?
  3. 「時代遅れのRock’nRoll Band」を聴く
  4. 2017年 勝手に選ぶベスト洋楽 TOP10
  5. 世界で大ヒット中の映画『スパイダーマン:ホームカミング』の主人公トム・ホランドの…

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】ドント・ブリーズ

    20年に一度のホラー映画と言うから期待していったんですが肩透か…

  2. 映画レビュー

    『LION ~25年目のただいま~』母を訪ねて三千里もGoogleがあればお茶の子さいさい?

    ベンジャミン・バトンをも凌駕する、なんとも数奇な人生である。幼少期…

  3. 映画レビュー

    驚異の技術力を示した実写版『ライオン・キング』だけど失った物もある・・・

    驚異的な再現力に脱帽としか言いようがないオリジナルに忠実に再現…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. 音楽

    【FUJI ROCK直前特集 Part.2】音楽に政治を持ち込むのは是か?非か?…
  2. 映画

    是枝監督『万引き家族』がカンヌで最高賞!カンヌにおける日本映画の歴史と、今回の受…
  3. 音楽

    2017年 勝手に選ぶベスト洋楽 TOP10
  4. 音楽

    【この夏も話題独占】ジャスティン・ビーバーの恋愛遍歴を振り返り!
  5. ハリウッド

    【ヒットの勝算はネット戦略にあり?】恐怖のピエロ映画『IT』が公開第三週で興収首…
PAGE TOP