スーパーマンの父親役から目立った作品にはご無沙汰だったケヴィン・コスナーが主演を務め、名優トミー・リー・ジョーンズとゲイリー・オールドマンも出演するなど往年スターの豪華な配役に加え、若手俳優の筆頭の呼び声も高いライアン・レイノルズも出演してることから、「新旧のスターの共演」が映画ファンとして嬉しかった。本来ならば、ライアン・レイノルズが主演をしないといけないところなのに、出来ない・・・まだまだ名スター達が後進に道を譲らないのか、彼らほどのカリスマ性を持った若手が出て来ないのか、とにかく爺様達が元気です!
殉職したCIA(ライアン)の脳の記憶や能力を司る部分を、別人の脳に移植させるという、斬新且つ、現実味を帯びない近未来的な設定が非常に面白かった。ハリウッド映画では、こういった現実味の無い設定を時たま見る。
例えば、ジョン・トラボルタとニコラス・ケイジが共演して話題だった、ジョン・ウー監督の『フェイス・オフ』(1997)なんかもそう。
FBI捜査官とテロリストの顔そのものだけを整形手術で入れ替えるという、当時の感覚としては、絵空事以外の何物でもない設定だったが、これが現実のものとなって驚く。
ハリウッドの空想は10年以内に科学が追いつく時代・・・凄い時代だ。
本作の主人公であるケヴィン・コスナーは“荒んだ思考しか出来ない凶悪犯”と、“幸せな家庭を持つCIAエージェント”の両極端の脳・記憶・感情を持つことで苦悩する。凶悪犯の性格の比重が大きい時に、移植されたエージェントの家に行き、その家に飾られた家族写真を見て、どこか悲しそうな表情をするコスナー。
その時、“幸せ格差”という言葉が頭をよぎった。あの時のコスナーは他人の記憶や感情が入ることで、凶悪犯として幸せというものを知らないで生きてきた人生の不毛さに気付いたかのように、初めて己を顧みる「異化作用」が行われていたように思える。結局、暴力からは幸せは生まれないのだ。
この臓器移植によって、人格が変貌するというのはリアルな世界でもあるらしい。簡潔に例を挙げると、17歳の少年の臓器を移植された老女が、今まで興味も示さなかったパンク・ロックを大音量で聴くようになったりということが、現実世界にあるというのだ。
劇中のコスナーも、移植直後は人道に外れた行動をするものの、次第に、自己犠牲も厭わず、人質の救出、世界の危機の回避に奮闘するようになり、その姿からは、もはや凶悪犯の面影も無く、人気ドラマ「24」のジャック・バウアーや、トム・クルーズが演じたジャック・リーチャーのように、アウトロー・ヒーローの様だった。
まさに、“永遠の英雄”ケヴィン・コスナー映画だなと感服したと同時に、新旧スター俳優の豪華共演、派手なアクションもあり、一流アクション大衆映画として楽しめること、間違いないので、是非オススメしたい。
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