まず私が小学生高学年の時に親にアニメのVHSを買って貰ったのが20年前。それまで、東映アニメや戦隊ヒーローなどの子供向け映画しか知らなかった幼き頃の私は、脳天に雷が落ちたかのような大きな衝撃を受けた。その時の感想は、純粋に「面白い」これしかなかった。いや、それで十分過ぎた。よく昔は「ビデオのテープが刷り切れるまで観た」なんて表現をしたもんだが、正に幼き私は大袈裟に言わなくても何百回とアニメ『美女と野獣』を観たのだった。凄いもので、小学生にして英語版の劇中歌を口ずさめるレベルだ。(意味は分からないけど、今で言うスピードラーニングか?)
そして、この『美女と野獣』は人生の転機だったと思っている。
『美女と野獣』が好き過ぎてディズニーランドに行きたいと親に懇願。(それまでにも何度も連れて行っては貰っているが、反抗期以降に自分の意思で行きたいと願ったのは、それは初めてだった)調度、TDLが10周年の時だった。その圧倒的なショーに感動し、中学以降は表現者になりたいと役者をし、大学も美大に進み、就職も自ずとクリエーター業、エンタメ業に就き、今は独立してクリエーターをしている。あの時の『美女と野獣』の感動が私の原点なのだ。
それほどの思い入れのある作品である。
幼き頃のアニメ版『美女と野獣』に感動した少年は、今や30半ばになり、この20年で様々な経験をした、嬉しい事と同じくらい辛いことも悔しいことも経験した。何かを失いながら今ここにいるような気がしている。
けど、この映画を今日観て救われた。
20年前と同じように涙した自分がいる事実に安堵感を覚えたのだった。
何も変わってない――どうやら大人になっても失うべきでないものは失っていなかったようだ。そういう自分でいれたことに、それを気付かせてくれた、この実写版に感謝しかない。
そう、感謝なのだ。この名作を、私の大好きなアニメ映画を、私が何よりも愛した名シーンを、アニメ以上のスペクタクルとして、完璧に実写化してくれたディズニーに脱帽し感謝しかない。
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これほど隙の無い映画を観たのは久々だ。
これまでのディズニーの実写化は、新解釈を加えることでアニメと一線を画し、飽和回避という点で成功させてきた。しかし、この『美女と野獣』は、原作そのものの実写を貫いた。内面の美しさこそ、その人の真の美しさであるというテーマもそうだし。ベルや野獣の衣装もそのまま。村の様子も似ている。世界中に愛された劇中歌もそのまま歌われていた。
それが全ての勝算だった。
アニメ作品としてオスカー史上初めて作品賞にノミネートされた大名作を改変するのは聖書に落書きするような愚行である。(その後、生身の役者の演技はアニメに劣るかの議論となり、長編アニメ部門が設立されたわけだが)
蝋燭のルミエールがベルを晩餐にもてなす際の「Be our guest」の過剰なほどの派手さと華やかな演出も、主題歌「Beauty and Beast」を背景にベルと野獣が踊るシーンの幻想的とも言えるロマンチックなシーンも、アニメ表現に劣らない実写でこそ成せる見せ方で、名シーンに肉体的な体温を与えた。本当に美しかった。
この作品のために作られた新曲3曲も、よりキャラクターの心情を表すに必要だった。
年間に映画を何本も観ていると(筆者の場合は劇場でしか観ないと決めているが)映画の世界観に引き込まれるという経験はそんなにないものだ。しかし、途中で気付いたのは、劇中のセットの隅々から、役者の演技まで張り巡らされた妖艶美に完全に吸い込まれていた。まるで、ディズニーランドにいるかのような、良い意味での現実逃避。心が浮き足立って楽しんでいるのが感じられた。
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野獣なんて愛せるはずがない。
アニメだからお伽噺だから・・・・・・いくら、好きな映画だったといえども、どこかご都合主義を感じていたが、この実写化を観ると不思議と、“何故ベルが野獣に惹かれていったのか”が分かるのだ。野獣の人間性、優しさや繊細さ、紳士さ、アニメでは描けなかった、ちょっとした心情変化を見事に表現していた。毛もくじゃらの野獣が、ジェントルメンでかっこいいのだ。
また、薔薇の花びらが散り行き、魔法がかかっていくにつれ、召使達が単なる道具になる(人間性を失っていく)という描写には、悲哀的な感情が渦巻く。魔法の恐ろしさを肌で感じれたのは新しかった。だからこそ、アニメでは脇に徹していた時計のコグスワース、蝋燭のルミエール、ポット夫人とチップなど、城の召使全員に感情が入った。心情描写の向上により物語に深みを与えた時点で、この実写は、ディズニー実写映画史上最も素晴らしい作品と評して良いと思う。
何より20年以上経っても少しも色褪せることがなかった名曲たちの普遍性に脱帽する。本当にいい曲だ。思い出すだけで泣けてくる。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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