まさに狂想曲。金に物を言わされ、米国そのものに踊らされるバリー・シールという操り人形の人形劇を見ているかの如し。「アメリカをはめた男」なんてサブタイトルも、センスが無いならまだ諦めがつくが、事実を履き違えたサブタイトルを付けるのは観客を混乱させるだけなので、やめた方がいい。「はめた」のではなく、良い様に「利用された男」が相応しい。
この映画を観るに当たっては、レーガン大統領下で起こった、前代未聞の政治スキャンダル「イラン・コントラ事件」が背景にあることを予習していると、その緊迫感や、バブリーな滑稽さが楽しめる映画だと思う。
当事件を説明してるとキリが無いので簡略化すると、先ず触れておきたいのは、ベン・アフレックがオスカーを手にした『アルゴ』で描かれた「アメリカ大使館人質事件」。この時に、米国は当人質事件を起こしたイランを敵視するようになるが、後に、レバノンの内戦中に過激派グループに捕まった米軍人を助けるために、その過激派の後ろ盾であるイランに武器輸出を約束するという苦渋の選択をすることになる。そして、CIAは、この時にイランに武器を売却した収益を、左傾化が進む中南米の国々、特に、ニカラグアで反政府戦争を行うゲリラ「コントラ」に与える。理由は、冷戦中に於いてソ連側に支援され、社会主義国家になったニカラグアが米国にとって脅威化しはじめ、見過ごせない存在になっていった。そこで、米国がとったのが内部の反政府ゲリラ「コントラ」に協力したって事件。国ぐるみで違法的にゲリラへ武器輸出や資金提供をするという一大スキャンダルを行っていたとされるが、実際のところ真相は闇の中である。
だから劇中でもトム・クルーズは、いつも通りの爽やかスマイルを一切崩すことなく華麗に危機を乗り越える。理由は、上記のように彼の後ろ盾が米国だから。違法な麻薬運送事業も見逃される。トムの起用がこれほど吉と出たのは久々というほど爽やか笑顔な顔面アップも多かったし、歯も白いし、文句無しのトム・クルーズ映画となっていた。実物のバリーはハゲデブなんだけどね・・・・・・
実在の人物を演じる際に、その人物の容姿と俳優のルックス関係ない方がいい典型例。ここまで原形無視なのも逆に爽快☆笑 #バリーシール #トムクルーズ #バリーシールアメリカをはめた男 #イランコントラ事件 pic.twitter.com/GTxgj0k0Ty
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) November 1, 2017
そんな何でもありなバリーであるから、億万長者になる。次々に札束が運ばれてくるもんだから、家に格納しきれない程になる。なもんで、庭に埋めて隠すとか、地元の銀行に毎日5万ドル送金するとか、で、国税局に怪しまれてしまって銀行に金が預けられないから、適当な会社を作って、適当な人材雇って、会社経営する・・・・・・なもんで、へんぴな田舎に高級車が多く走るという異様な光景が産まれる。コントみたいなことが起こるわけだ。そういう様が実に面白くて、景気いいな~ってだけではなくてね、断るに断れない、ある意味、金はあるけど不幸な男なわけである。
凄く具体性に欠けるんだけど、ボケーと聞いてたラジオで、人間の幸せ指数の高さと貯蓄額というのは、500万円前後をkeepしてるのが最も幸せ指数は高いらしい。それ以下でも生活は苦しいし、それ以上でも資金のやりくりに翻弄されてしまう。バリーが正にそれ。この映画を観てて、金もたくさんあるし、俺のような下層の庶民に夢物語を見せてくれるのかなと思ったけど、そうも、羨ましくない。これって、ディカプリオの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でも同じこと思った。やはり、大金を掴むのは相応の危険と裏腹な立ち位置にいるもんなんかなと思ったりした。
ま、とにかく、55歳にしてケツを二回も見せたトムの役者根性と、決して初老のケツではない奇跡のプリケツに拍手しとこう!(笑)
(文・ROCKinNET.com)
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