夢のような時間は過ぎるのも早く。その時間は儚い。このフェスが開始する時にオーガナイザーの渋谷陽一氏は我々をCDJロスにすると言ったが、正しくそういう気持ちになるのが最終日だ。現実に戻るのが億劫になる。体力にキツイなと思いながらも、十分に堪能した先に感じるのは、感慨深さだ。幕張メッセの渡り廊下の柱に備え付けられた液晶に「謹賀新年」と表示された光景を観ると、新年が明けた祝祭的な気持ちと、このフェスが終わってしまった寂しさと相反する気持ちが自分の中で渦巻く。気持ちは早くも春フェスに向くわけだが、2017年の終わりを、この空間で過ごせたのは、今しか無いわけで、本当に充実した素晴らしい時間が過ごせたことに、一緒に行ってくれた友人達と主催・運営サイドに感謝したい。
2017/12/31
●MONOEYES
細美武志はいつ見てもリアルだ。シリアスなこともストレートに表現する人だし、ロック・バンドの常套句めいたことも言わない。思ったことを、そのまま言葉にする。「俺が腰曲がった爺さんになってステージに出てきても、今日ここにいる、お前らなら歓迎してくれそうだしさ、また会おう」と言った。観客との信頼関係が確固たるものとして完成されている。こういう人をロック・スターと呼びたいと、改めて思った。
今年7月にリリースされた新作『Dim The Lights』の楽曲も聞き劣らないところにバンドの将来性を感じる。エルレのような若いがゆえの刺々しさは、もはやないけど、俺が、the HIATUSよりも同バンドを支持する理由は、やはりMONOEYESの方が細美らしさを感じるから、エルレの幻影を探し求めなくてもいいからかも。
●MY FIRST STORY
夏のロッキンでも言っていたが、兄貴バンドへの口撃が緩まない。
そうは言っても、takaと佐藤健(共にアミューズ)の対談時に、佐藤健が暴露していたのだが「hiroはtakaの言うことは絶対で崇拝している」と。実際にそうらしい。そういう兄弟間の信頼関係があるからこそ、バンドではライバルだと堂々と大きなステージ上で言えるのかも知れない。
今日は兄貴バンドを「俺達が一番共演したくないバンド」と揶揄した。しかし、結果は惨敗だったと。バンドって、実力だけでは大成しないと思う。運とタイミング、マネージメントが重要だと。兄貴バンドにはそれがあった。けど、それらの外的要因だけに限って兄貴バンドよりも劣るとしても、彼らは思いっきりエモだし、若い世代へのMCに因る吸引力は凄まじい。まして、“弟バンド”というコンプレックスからの脱却など、存在自体が聴衆の共感を得るに十分なストーリー性が出来上がっている。だから、兄バンド以上に若い世代からの支持が厚い。ロック・キッズ達が暴れまくっていた。その光景は、ハードロックの未来を見据えているような気がして、実に気持ちの良いものだった。それにしても、森兄弟のカリスマ性のDNAや末恐ろしいと思った。
●感覚ピエロ
水着のお姉ちゃんが続々出てきては、メンバーと絡んで、下ネタ満載の歌詞で観客を煽る・・・・・・まるでサザンのライヴのような感じだった。彼らが目指してるのも、そういう方向性なのか?(YOUTUBEの閲覧では年齢制限がかかった新曲「A BANANA」はオレンジレンジっぽかったし)
彼らを初めて観たのは、ドラマ「ゆとりですがなにか」の放送開始直後の春のフェスで、その時すでに物凄い人気を誇り、MCや楽曲のクオリティの高さなど、完成しきった感があって驚いたが、その勢いが緩むことなくハングリーなまま大きな規模のステージを上がって行っているのを見て安堵する。変に奢っていない。そして、もっと大きくなって欲しいからこそ思うのは、「拝啓、いつかの君へ」の次の一手が欲しい。
●ストレイナー
ライブが始まるや否や、細美武志が乱入し「ROCKSTEADY」を一緒に歌うサプライズがあった。
テナーも、細美も、俺達世代が(30代が高校生・大学生時代に)憧れたロック・スターだ。ACIDMANだってそう、10-FEETもホルモンも。「Melodic Storm」を聴いた時、フェス文化に染まって行った十数年前の若かりし頃の自分を思い出して、感慨深くなった。
ホリエ(Vo)の声質の良さに憧れた自分を思い出した、何一つ衰えていないことが嬉しかった。それどころかバンドとしての円熟味が増してる気がした。群雄割拠な邦楽ロック・シーンでは新しい世代のバンドがどんどん出てきては物凄い速度で人気を拡大する。
消えていくバンドも多い。最大キャパの常連であったベテランが端に追いやられることもある。
けど、個人的には40代世代のバンドこそ、今のフェス文化の創生期を支えてきた功労者なわけで、フェスの運営者は、この世代のバンドを大切にしなければいけないと本当に思う。新陳代謝なくして同じ面子に落ち着くのも違うが、新しいもの、流行ばかりを追いかけるのが正しいとも思わない。
●サンボマスター
伝説の初武道館の記憶も新しい。充実したであろう2017年を占めるサンボはどんなサンボを見せてくれるか楽しみだった。期待通りで、想像以上に物凄いライヴだった。
本当に山口隆(Vo,G)の煽りは他のどんな特効や演出よりも強力である。観客を煽る!煽る!日本一である!!負けじとこっちも燃えてしまうんだよね。四日間の疲労でグタ~っとしてる場合じゃないんだよね。
「世界をかえさせておくれよ」「できっこないを やらなくちゃ」などのお馴染みの曲が楽しいし、武道館でも言っていたが「おめぇらの本当の居場所は(残りのクソみてぇな毎日じゃなくて)ココだ」って。もぅ、いちいち琴線に触れてくる。最高なんだよぉ!思わず、涙が流れる。こういう涙を流させてくれたサンボに感謝。この涙はね、またサンボに会うんだって決心と、クソみたいな日常に押しつぶされることなく強く生きようって決心でもあるんだよね。年越しの瞬間が近付く時に、そう思わせてくれたサンボに感謝!人生賛歌であり、応援歌であり、生きることを後押ししてくれるのがサンボマスターってバンド。いつ見ても全力なサンボこそ、俺達の味方であり、信頼できるロック・バンドなんだ。
●[Alexandros]
新世代のロック・スターの姿がそこにはあった。「ワタリドリ」「Waitress, Waitress!」「Starrrrrrr」など、カウントダウンの瞬間の帳尻合わせのためか、MC無しで連投されるキラー・チューンの数々に圧倒される。とにかく、楽曲の認知度が高い。ロック・フェスに来ている者なら“知っていて当然”と言わんばかりのアンセムばかりだ。同時に、とてつもないバンドになったと感じたこと、[Champagne]時代から応援してる者として、同世代で、こういうカッコ良いバンドがいることに喜びを感じる。
ワンマンを除いたフェスでのパフォーマンスで、彼らのベスト・アクトは2016年のサマソニのメインステージのパフォーマンスだったと思っている。あの時は気合の入れようも違ったように見えたし、実際に演奏も神がかっていた。(洋楽フェスでのアウェイ感が、逆に彼らを燃えさせたのかな?)この日のパフォーマンスは、それに匹敵する気迫すら感じた。まるで、カウントダウンのために作られたかのような新曲「明日、また」は、年明けに聴くにはあまりにシチュエーションがピッタリ過ぎたし、未来に希望を持たせるというロック本来の役割をきちんと担っている楽曲だなと思った。ここ数年はとにかく「ワタリドリ」頼りだったが、彼らの新しい代表曲にしてもいいのでは?と思うほどだ。素晴らしい年越しをさせてくれたドロスに感謝しかない。2018年良い年になりそうだ。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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