ONE OK ROCK初のドーム公演。ロックというジャンル括りに拘らず、邦楽シーン全般で考えても世代を超えた随一の人気を誇る彼らにしては遅いくらいのタイミングだ。東京ドームは高校生から還暦近いんじゃないかという年代まで幅広い観客で埋め尽くされた。大衆ポップ歌手のコンサートで見られるような老若男女が集った光景。ロック・バンドの単独公演としては珍しい。平日の公演にも関わらず、チケットは争奪戦となった。如何に、ワンオクが日本を代表するアーティストであるかの証明にもなったと思う。
昨年2017年初頭にリリースされた『Ambitions』を引っ提げて全国をまわった今回のツアー。昨年、幕張公演を観てから早いもので約1年が経過しようとしている。その後、北米~ヨーロッパ~アジアと海外をまわった。思えば、ワンオクほど海外で成功した日本のバンドはいない。それは、すなはち日本のロックが世界に通用し得ることをワンオクが示したに等しい。その後の凱旋公演が今回のドームツアー。実に長期にわたる壮大なツアーである。
最新曲「Change」から、「キミシダイ列車」「Deeper Deeper」「The Beginning」などの歴代の強力アンセムを連投し、しかも初期の楽曲「内秘心書」まで披露し、彼らの軌跡を辿る映像が流れたり、MCでも今日までの思い出を語るといった集大成のようなライヴ。周年祝いでも何でもないタイミングにして、ここまで祝祭的な気持ちになれたのは、ロックバンドとしての理想を追い求める彼らの進化を何年も前から見てきたからであろう。
その反面、感慨深さに浸る余裕すら与えないほどの高揚感が充満していた点もワンオクらしさを感じる。特に、終盤の「Skyfall」では「仲間を降臨させたい」というtakaの紹介で、Masato(coldrain)、MAH(SiM)、Koie(Crossfaith)がステージに現れ、ドームに大歓声が轟いた。旬のミクスチャーバンドのフロントマン4人の共演は、かっこいいなんて常套句が実に安っぽいほどの力強いもので、そのアグレッシブなボーカルのアンサンブルに鳥肌が立つしかなかった。
この日、takaが言ったように「第一章を終えて、第二章に進んでもいい頃なんじゃないかと思う」と、正しくバンドとして、現状これ以上ない高みに上り詰めた自覚ある言葉を聞いた時に、果たしてワンオクは「どこまで大きくなるんだ」と想像すれば、誰も経験したことの無い領域に踏み込んでいる気がした。もしかしたら、数年後には日本人として異例のビルボード上位に食い込むなんてことが絵空事ではないとすら感じる王者の風格。
よくワンオクのライヴを観てエモーショナルなんて表現をする人がいるが、誤解があるように感じる。takaは感情的なロック・ミュージシャンではない。実に冷静な人である。バンドが巨大化するにつれtakaは冷静沈着な言葉を口にするようにもなった。この日も、「これほどのツアーをしてしまうと、次自分たちに何があるのか分からないけど、挑戦するか止めるかの二択」だとtakaは常に自分の立ち位置と未来を客観的に見据えている。当然「今後もぶっちぎる宣言」をし、5万人が湧いた光景は、新しい時代の到来を感じさせた。
takaは過去に、ワンオクは誰かの為に音楽をやっているわけじゃないと言ったことがある。自分の為にやっていると。そんな自分の理想を追い求める過程で、多くの人とワンオクというバンドを共有していきたいと。その共有がここまでの規模になった。森進一の息子だとか、元ジャニーズだとか、いろいろと揶揄されて、まるで企画バンドのように扱われていたデビュー当時、彼らがまさかここまでの存在になるとは思っていなかった。
しかし、ワンオクがドーム公演するにまで大きくなったのは必然だったのかもしれない。先行き不透明な時代、若者も大人でさえも自分たちの未来が見え辛い。一歩踏み出す勇気を必要としているが、なかなか出来ないでいる。しかし、takaは売れることを確証されたジャニーズを自ら退所し、父親と仲違いしてまでバンドという選択をし、家を出て、己の道を切り開いてきた。まだ彼が10代の頃の話だ。takaのカリスマ性はどこから来るのかと考えれば、こういう部分にあると思った。「人生を5回やり直したとしても、ONE OK ROCK以外の道は絶対に選ばない」という言葉に集約されているような“決断”と“覚悟”こそ、時代が求めるカリスマ像である。
アンコールの「完全感覚Dreamer」でドームの熱が最高潮に達し、ラストはワンオク新時代の代名詞的名曲となったと言っても過言ではないだろう「We are」で会場中の大合唱を巻き起こし、ライヴは幕を閉じた。
もはや放心状態である。ここまで完璧なロック・ライヴはそうそうない。それを結成10年ちょっとの若手がやってのけた奇跡とも言える偉業に脱帽する。日本のロック・シーンにおいて強烈なエポックな公演だったことには間違いない。新時代のロックが確立された瞬間に立ち会い、共有できたことに喜びを感じずにはいられない。
◆SET LIST
M-01 Taking O ff
M-02 未完成交響曲
M-03 キミシダイ列車
M-04 Cry out
M-05 The Way Back
M-06 Bedroom Warfare
M-07 Clock Strikes
M-08 One Way Ticket
M-09 内秘心書
M-10 Wherever you are
M-11 Last Dance
M-12 Deeper Deeper
M-13 I was King
M-14 Take what you want
M-15 The Beginning
M-16 Skyfall
M-17 Mighty Long Fall
M-18 Nobody’s Home
-ENCORE-
M-19 Change
M-20 完全感覚Dreamer
M-21 We are
2018.04.04(Wed)@東京ドーム
(文・ROCKinNET.com編集部)
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