前日のエルレ復活ライヴの熱気も残っている海浜幕張のZOZOマリンスタジアム。この日は、[Alexandros]の初のスタジアム公演が開催された。彼らがまだ[Champagne]の時代、人気が爆発した正にその時は、エルレ活動休止直後だった。ロック界がカリスマを失った時に、代わりの存在を探す中で最も如実に頭角を現したのが[Alexandros]だった。今や泣く子も黙る人気絶頂期を迎え2010年代を牽引してきた新カリスマバンド[Alexandros]が、元祖カリスマバンドであるエルレの翌日に同じ場所で同じ規模感のライヴをやることに何か宿命的なものを感じる。
ただ、[Alexandros]はエルレとは違う。それが良いか悪いかではないが、自然体のエルレのスタンスとは正反対で、[Alexandros]は、バンドの規模感を大きくしたいタイプのバンドである。ロック・ミュージシャンの常套句「もっとデッカイ会場に連れてってやるよ!」的なスタンス。言わば正統派な大衆バンド。観客と共にバンドの規模感が拡大し、一緒にジャパニーズ・ドリームを摑もうぜというストーリーを紡ぐバンドだ。だから、この日のスタジアム公演は彼らにとっても観客にとってもバンド史に残る強烈なエポックであり、特別な夜だった。
前々から感じているが、川上洋平(Vo)は正統派のロック・スターにして実に謙虚であるということ。基本的にはMCでは敬語を使い、客を煽る時は英語で叫ぶ。だから、オラオラ感が全くない。この紳士さが今時なのかもしれないと思った。昔、彼らがTOKYO-FMでレギュラー番組(「SCHOOL OF LOCK!」のワンコーナーだったかな?)をやっていた際に、洋平の父親が出演したことがあった。その時、洋平の父親は、“君たちが音楽をやって、その音楽にお金を払う人がいるというのは凄いことだ”と熱弁していたのを聞いたことがある。お金を頂くことがどれほどのことなのか。だから、感謝しなさいと。まだ武道館も夢だった頃の話である。その洋平父の言葉は[Alexandros]の姿勢に表れていると思う。スタジアムに来たのは“俺たちの力だ!”という自己顕示欲がまるっきりない。むしろ、貴方たちのお陰だと、感謝を最大限に還元したスタジアム公演だった。その姿勢こそ[Alexandros]が支持される由縁である共感性だ。
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壮大なストリングス隊の生演奏の中、順々に登場するメンバー。そして、いきなり「ワタリドリ」が演奏され、洋平の登場と共に割れんばかりの歓声が上がる。その時ふと思ったのは、彼らの最も知名度のある代表曲を冒頭でやってしまうことの凄さ。これはヒット曲が多くある証明でもあり、代表曲に縛られない意思でもあろう。
この「ワタリドリ」自体が非常に開放的なスケールの大きい楽曲ではあるが、この大規模な会場で歌われた爽快感や、楽曲が共有され合唱が起こった光景は圧巻としか言いようがなかった。冒頭から既にクライマックスだった。間髪入れず、「city」「Waitress, Waitress!」「spy」と懐かしい曲が連投される。ここで、特に普段は自己主張しない白井(G)のギター・テクニックがここぞとばかりに堪能できたのが良かった。個人的に圧巻だったのは、中盤の「Starrrrrrr」「Droshky!」「Run Away」「Girl A」というアゲ曲が連投された時だった。サイケで、どこかUK的で、しかもキャッチーな楽曲が多い。改めて本当にかっこいいバンドだなと思った。続く、夜空に映える「ムーンソング」の幻想的な旋律の美しさに夢心地になる。どこを切り取っても、この日のハイライトとなる名曲の連投が圧巻だった。
実は、1stアルバムから順を追って楽曲が演奏されていたのだ。中盤の洋平のMCで明かされて気付いたが、結局はここをひとつの到達点とし、バンドの歴史を総括しているのだ。もともと、路上ライブからスタートした若者四人がスタジアムで35,000人を前に演奏している奇跡。その奇跡が成されるまでの足取りを、着実に聴かせる感慨深い時間だった。[Champagne]時代に、スペースシャワーTVで庄村(Dr)が芸人エレキコミックと冗談をやっている時代から、このバンドを応援していただけに時の流れが心に染み入る。
途中、花道が設けられていたステージに移動しメドレーを演奏したが、これは天候が雨なら設置しない予定だったという。開始時は曇りだった(時々晴れ間も見えた)のだが、途中から本降りになった雨。「これも、ウチラらしい」と笑う洋平にほっこりする。徹底して嫌味もなく爽やかな男である。
今年2018年もカウントダウン・ジャパンにて、[Alexandros]で年を明けた。その際に、秋に最新アルバムが出ることは知らされていたが、“そんな先のことまで知らないよ!”と思ったのだが、もはや数カ月後のことである。そんな最新作からの楽曲も披露しつつ、「明日、また」「I Don’t Believe In You」と今の自分たちの楽曲を見せることで、客を最高潮なテンションにまで到達させた。本編最後は、福士蒼汰主演の映画主題歌にもなっている最新曲「Mosquito Bite」で締める。軌跡を辿るだけではなく、未来をも見据えた姿勢は流石だ。
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アンコールの最後で「Kick&Spin」を披露した。個人的に最も好きな曲だけに嬉しかった。《笑われたなら/笑い返せばいい》という反骨的なメッセージと共に《so we got to/stay alight/stay alive/stay alight/and let go of all your past(だから俺らは/輝き続けるんだ/生き続けるんだ/輝き続けるんだ/過去なんか手放しちまって)》と力強い未来への飛躍を高らかに歌い[Alexandros]史上最大の宴は幕を閉じた。
最後に「Kick&Spin」を選んだ理由は何だろうか? 人気曲であること、サイケデリックであり骨太なロクであることも最大の要因だろうが、彼らはここを終着点と捉えてない意思表示なのではないか。磯部(B)も「もっとデカイところ、東京ドームとかでやりたい。そう思うことが大事ですから。」と言っていたが、[Alexandros]のストーリーはまだまだ続くのだ。この先が楽しみでしょうがない。
セットリスト
M-01.ワタリドリ
M-02.For Freedom
M-03.city
M-04.Cat 2
M-05.Waitress, Waitress!
M-06.spy
M-07.Forever Young
M-08.Starrrrrrr
M-09.Droshky!
M-10.Run Away
M-11.Girl A
M-12.ムーンソング
M-13.Oblivion
M-14.This is Teenage
M-15.Wanna Get Out
M-16.Famous Day
M-17.Kill Me If You Can
M-18.Waterdrop
M-19.Thunder
M-20.Travel
M-21.Leaving Grapefruits
M-22.LAST MINUTE
M-23.明日、また
M-24.I Don’t Believe In You
M-25.Mosquito Bite
En-01.ハナウタ
En-02.Adventure
En-03.Kick&Spin
(文・ROCKinNET.com編集部)
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