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司会者の不在や、女性・人種・移民・LGBTなど様々な方面で騒がれていた今年のアカデミー賞だったが、個人的には無難に終わったかなという印象だった。司会者いなくても大した影響はない声も多いらしいが、どこか味気なく、映画ファンとして言わせて頂くならば、オスカーは授賞式以前にエンターテイメントであり社会的影響力がある舞台であることを忘れてはならない。豪華絢爛で華麗なショーが展開される言わば娯楽の総本山のようなものであったはず。やはり司会者不在では淡々とし過ぎた感がある。
作品賞は意外にも『グリーンブック』が獲った。
大本命とされていた最多ノミネートのNetflix制作の配信映画『ROMA/ローマ』は監督賞含めた3部門に落ち着いた。少しホッとした。何故なら、ネット配信映画を、きちんと映画の最高峰である賞が拒否したからだ。ま、拒否というと少し大袈裟かもしれないが、『ROMA/ローマ』は監督賞まで獲っているわけで順当に考えれば作品賞を獲ってもおかしくはないわけで(白人製作者ばかりの『グリーンブック』が選ばれたことへの批判もあるらしいが)。これが、もし『ROMA/ローマ』が作品賞に選ばれてしまえば、映画を根底で支える興行という構造が成立し得なくなることを示唆し、従来の映画ビジネスの否定に等しかったからだ。映画は映画館でチケットを買って上映されて、その売上で興行が成り立つもの。ネット配信で済むものではない。この議論に関しては、ネット時代だとか時代の流れ云々は関係ないと思っている!
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主演男優賞に『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックが、主演女優賞に『女王陛下のお気に入り』のオリビア・コールマンが選ばれたのは番狂わせだった。単なる客寄せパンダ的な扱いだと思っていた『ボヘミアン・ラプソディ』が最多4部門(主演男優賞、音響編集賞、録音賞、編集賞)と健闘したことは驚いた。あんだけ批評家たちに不評だった映画が(「Wikipediaを映像化しただけの映画」とか「YOUTUBEでクイーンのライヴ見てたほうがマシ」とか散々な評価だったにも関わらず)大衆の支持を得て、こうも評価が変わるとは、なんとも皮肉である。自分らしさを大事に生きたゲイで移民の青年の映画を皆が祝福していることを挙げ、「自分もエジプト系アメリカ人だ」と高らかに宣言したスピーチは今回の授賞式でひと際感動を呼ぶ場面だった。
堂々と自分らしく人生を生きた、移民でゲイの男性の映画を作りました。今夜皆さんが、彼とその物語を祝福しているという事実は、こうした物語を僕たちが切望していた証しです。
ゲイでは無い男性がこういう発言をオスカーの大舞台でする時代、マレックがナイスガイ過ぎる。#ボヘミアンラプソディ pic.twitter.com/u1XDiwZ3ZI
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) 2019年2月27日
また、これまでアカデミー賞に批判的だったスパイク・リーが初めて脚色賞でオスカーを手にしたことも忘れてはならない。貧しい祖母が自分をニューヨーク大学大学院の映画学科入れてくれたことに感謝し、奴隷として黒人が連れて来られた400年間、この国を作り上げた祖先に賞賛を贈った感動的なスピーチ。続けて、2020年に正しい選択をしようと呼びかけ、トランプ大統領は後にコレを「人種差別的攻撃」と批判している。
リー監督作品はこれまで米国内では嫌われてきた。それは、彼の映画が「意見」であったからだ。アメリカの闇をえぐる作風や風刺、メッセージは、今でこそ多様的兆候を見せているが、つい十数年前までは白人至上主義であったハリウッドとしては目の上のタンコブだった。そのことを思えば、今回の受賞がどれほどの感慨深さだか自ずと身に染みるだろう。
ダイバーシティが叫ばれ始めてから、毎年何かしらが起こるようになってきたアカデミー賞であるが、それだけ映画界も変革の時期に差し掛かっているのだなと感じる。でも、これは非常に良い風潮だなと思っている。多様性とは言えども、資本で物を言わせるハリウッド映画の中国化に比べればマイノリティにスポットライトが当てられていく現状は支持するに相応しいだろう。今後の映画界の動きにも注目である。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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