アカデミー賞

主演女優賞大本命のグレン・クローズがまたもオスカーを逃した理由とは?

(C) META FILM LONDON LIMITED 2017

『天才作家の妻』名演に関わらず今回も“無冠の女王”健在!

『天才作家の妻 -40年目の真実-』でノーベル文学賞を受賞した夫を献身的に支える妻を演じて本年度の映画賞の主演女優賞を総なめにしてきたグレン・クローズだが、肝心のオスカーではまたしても受賞を逃した。実に7回目のノミネートである。
御年72歳になる彼女、業界に残してきた栄光は数知れず、エミー賞やゴールデン・グローブ賞など受賞歴も実に多い。天敵であるメリル・ストリープ不在の今年こそ(彼女の評価が高い時に限ってメリルがオスカー像をかっさらっていく)、悲願の初受賞となるかと思いきや、受賞は『女王陛下のお気に入り』のオリヴィア・コールマンであった。ここまで獲れないとなるとアカデミー賞から嫌われているとしか思えない。

名女優の彼女がアカデミー賞から嫌われる理由は何か?

やはり悪役のインパクトが相当に大きいのかも知れない。
全米を震撼させた1987年『危険な情事』での鬼気迫る演技は、それこそオスカー級であったが、浮気を真実の愛と勘違いする究極のメンヘラ不倫女という役が役だけにアカデミー会員がビビったのかも(笑)その後も、ディズニーの不朽の名作『101匹わんちゃん』の実写版で悪役クルエラ・デヴィルを演じ、見事なまでのハマり役に拍手喝采であった。今ディズニーは空前の実写ブームであるが、オリジナルのアニメキャラを超越するほどの存在感を発揮しているのは彼女しかいないと言って過言ではない。ディズニー実写史上歴代トップだろう。

グレン・クローズがオスカーを獲れなかった理由

良い人を演じればオスカーが獲れるなんてジンクスは無い。それなら『ミザリー』のキャシー・ベイツも、『モンスター』のシャーリーズ・セロンも受賞してはいないだろう(実際に悪女役の受賞数は少ないのは事実なんだけどね?)。では、何故グレン・クローズは大本命と言われながらも受賞を逃したのか?
そこには演技以上に「オスカーの好み」が関係していると思われる。

実在の人物では無かった

メリル・ストリープがサッチャーを演じたように、アカデミー賞は実在の人物の物真似芸が好きである。本年も主演男優賞を受賞したラミ・マレックがクイーンのフレディー・マーキュリーを演じ見事に主演男優賞を受賞した。主演女優に限って言えば、ヘレン・ミレンがエリザベス女王を、マリオン・コティヤールがエディット・ピアフを演じオスカーを獲得している。今回のグレン・クローズは架空の人物である。

肉体改造やブスになるとかしなかった

先程にも挙げた『モンスター』のシャーリーズ・セロンなんかに代表されるように、一瞬「え?」と思わせる変貌ぶり(と言うか汚れっぷり)、これもオスカーの大好物。昨年の『スリー・ビルボード』のフランシス・マクドーマンドのすっぴんで泥まみれで暴走する姿とか、ナタリー・ポートマンが『ブラック・スワン』で精神崩壊させてメイクがドロドロ落ちていくとか、とにかく美しい象徴であるはずの女優が汚れていくことが大好きなオスカー。女優に限ったことではないが、太ったり痩せたりは受賞に最も近い。今回のグレン・クローズは一般的な主婦で実際の彼女の風貌と大差なかったので該当しない。

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オスカーはヌード好きだが72歳に脱げは酷な話

2013年の司会セス・マクファーレンが授賞式の冒頭で歌ったことも記憶に新しいが、ケイト・ウィンスレットに代表されるように裸になる女優もオスカー好みである。ハル・ベリー『チョコレート』、ヘレン・ハント『恋愛小説家』、ホリー・ハンター『ピアノ・レッスン』、ジョディ・フォスター『告発の行方』と実にヌードの末にオスカーを獲得した女優は多い。もちろん、年齢のこともあるから、グレン・クローズは脱いでない。

歌って踊れる訳もなく・・・・・・

歌って踊らない。エマ・ストーン『ラ・ラ・ランド』、マリオン・コティヤール『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』、リース・ウィザースプーン『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』、グウィネス・パルトロー『恋に落ちたシェイクスピア』など、華麗に歌って踊る女優も獲りやすいが、逆にグレン・クローズが歌って舞う姿が想像できない。

Metoo的“闘う女性”で無かった!

何よりも大きいと思われるのは、今回のグレン・クローズの役が自立的だったり、『天才作家の妻 -40年目の真実-』自体が女性が活躍する作品と言うわけでもなく、献身的に夫を支える女性像だったのが、今のMetooの風潮に合致しないことだろう。フランシス・マクド―マンド『スリー・ビルボード』、メリル・ストリープ『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』、少し前になるが、サンドラ・ブロック『幸せの隠れ場所』、ジュリア・ロバート『エリン・ブロコビッチ』のように何かと闘う女性像は多くの同性の支持も得られ、また好感度も高い。けど、今回のグレン・クローズは単なる女性作家なのだ。病んだり、虐げられたり、勇ましかったり、そういう特殊性が無い。彼女の代表的な役柄としては物足りない。

長いキャリアにおいて業界への功績も十分で、70歳を超えた今もなお主演を張れる女優という希少な存在にも関わらず、とことん主演女優に恵まれない気の毒な大女優グレン・クローズ。しかし、彼女は今賞レース中にオスカー大本命であることを質問され「お情けで貰える賞ならいらないわ」と答えたという。かっこいい。流石は大女優である。まだ現役バリバリ、いずれ彼女がアカデミー賞の壇上で受賞スピーチをする日が来ることを願ってやまない。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

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