EDM、HIPHOP、RAPなどのホップ勢がチャートを独占しロックが居場所を無くし存在意義を模索する。10年代の音楽シーンは正しくそんなロック不遇の時代だった。そんな中、テイラー・スイフトやブルーノ・マーズと真っ向から勝負することが出来たロック・バンドはマルーン5以外にいなかったと断言しても良い。日本でも洋楽が低迷したと言われた時代でもあったが彼らの支持は厚かった。名実共に人気であることに疑いの余地も無い唯一無二なバンドであるのは確かだ。
今回のツアーは名義上は2017年の『レッド・ピル・ブルース』を引っ提げての新作ツアーだったが、蓋を開けてみれば、まるでバンドの周年祝のベスト盤のような集大成的ライヴだったことが嬉しかった。日本に自分たちの新作がどれほど届いているのか定かではない、ならアレもコレも全部やってしまおうと言わんばかりの凄まじいノリ。なんせヒット曲の多いバンドだ。10年代を彩って来たポップ・ロックを惜しみも無く披露した。
実は、マルーン5はこれまで幾度となく来日公演は行ってきたが、東京ドーム級の大規模で本格的なライヴは今回が初めてのこと。サマソニで「見たいヘッドライナー」アンケートでも常に上位にランクインされてきたにも関わらずホール規模でしかライヴを行ってこなかった。だからこそ待望中の待望のライヴだった。前座のDJの時から会場は歓声に包まれ、踊る人も多数、異様な興奮と熱気に包まれていたことが何より切望さを表してた。
しかし、ライヴ自体は非常にオーソドックス。コールド・プレイみたいに多彩な紙吹雪が舞うとか、過剰な演出は一切なし。MCもほぼない。しかし、人気曲の連投に盛り上がりは途絶えることが無かった。地味ながら最高にイレイション。余計なものが削ぎ落とされたからこそ見えたマルーン5の姿は最高に尽きる。
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冒頭は「What Lovers Do」最新作からの選曲だ。キャリアでも新しい曲で今回のツアーのテーマ性を垣間見せ、自分たちの位置を明確にした。そこから「Payphone」「This Love」「Misery」「Animals」「Makes Me Wonder」とバンドの歴史を辿るようなセットリストに満腹感だった。15年前の曲から10年代後半の曲まで縦横無尽に演奏される無時代性、普遍性にも脱帽だが、「Payphone」なんかはCMにも抜擢されたし、最近ではtiktokでも頻繁に使用されているように、マルーン5を知らない観客が仮にいたとしても大半が耳馴染みであろうという浸透性が凄い。洋楽のロック・バンドでお茶の間レベルで楽曲が届くなんて彼らにしか出来ないだろうなんて思ったりした。
途中マイケル・ジャクソンの「Rock With You」をカヴァーする粋な演出も。マイケルから性的虐待を受けたと告発するドキュメント映画が物議を醸し出してるが、そのことに対する抗議とマイケルへの敬意を感じた。しかも、このハイトーンのダンサブルな名曲が如何にもマルーン5にマッチしてて、彼らの楽曲群で浮いてないことにも驚いた。そこから「Moves Like Jagger」に雪崩れ込む高揚感ったら無かった。5年前、同会場でストーンズを観たことがあるが、本当にミックのように踊りながら5万人と対峙するアダムに、現代のカリスマ性を見出す。
アンコールでも「Girls Like You」「Sugar」など、待ってました!と言わんばかりの大ヒット曲を披露し幕を閉じた。スーパーボウルのハーフタイムショーでリベラル界隈から猛バッシングが起こったわけだが、彼らは「Girls Like You」で女性をフューチャーしたりとセクシャリティはもちろん様々な面で非差別的な態度を一貫して取ってきた。なのに、一連の騒動の中、誰もやりたがらない仕事を引き受けただけで、黒人差別だと非難されることには些か疑問しか残らなかったりもするのだが。時代を彩り続けるマルーン5、また世界的なヒット曲を引っ提げて、大きな会場で(サマソニでもいいよ笑)再会したいものである。
01. What Lovers Do
02. Payphone
03. This Love
04. Misery
05. Sunday Morning
06. Animals
07. One More Night
08. Cold
09. Maps
10. Harder to Breathe
11. Don’t Wanna Know
12. Love Somebody
13. Makes Me Wonder
14. Rock With You (マイケル・ジャクソンのカヴァー)
15. Moves Like Jagger
Encore
16. Forever Young(アルファヴィルのカヴァー)
17. Girls Like You
18. Lost Stars
19. She Will Be Loved
20. Sugar
(文・ROCKinNET.com編集部)
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