とんでもない東京ドーム公演だった。エド・シーランが現代音楽シーンにおける時代の寵児であることは世界中の誰もが認める事実であろう。しかし、アコギ一本で5万人の前に立つというのは凄まじい。常人には出来ない。彼のプレイヤーとしての凄味に驚愕し、往年のヒット曲に酔いしれる夢のような一夜であった。
EDM全盛の時代から、潮流と対峙する、アコギを基軸としたアナログなスタンスで世界で勝負をかけ見事に無二な存在にのし上がった天才。もちろん、楽曲作りの発想自体は最先端であることは言うまでも無く、10年代のポップの形式を築いたと言っても過言ではない。
今回の来日公演は、最新アルバム『÷(ディバイド)』の世界ツアーの一環であり、彼が初めて東京ドームに立つ記念すべきライヴである。スモークや花火ドッカーンのような派手な特効は皆無。まるで通行人行き交う路上ライヴでギターを弾くような(失礼な例えだが、もちろん演奏技術やメロディメイクセンスはさて置き)何より自然体なのが凄い。ステージもドームにしては小ぶりで、エドが立つに十分なスペースしかない。前座のワンオクが狭いと冗談めかして言っていたくらいに。
そんなステージを何万人の視線が集中するという異様な空間。アコギを鳴らしながら、ループ・ペダルを使って音を重ねる、しかも、プレイしながらその場でループさせる手法。そこには時に緊張感が生まれ、時に至福な時間が流れるという、その時だけしか生み出されない生音だけ響く、正にタイマン勝負な奇跡のパフォーマンスだった。この日だけしか聴くことが出来ない音。これが出来るのはエドしかいないだろうし、彼の実力を持って初めて成し遂げられる偉業でもある証明したわけだ。
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全てを振り返ると書き切れない感動があったので特に印象深かったシーンを切り抜けば、オープニングSEも無くフラリとステージに現れたエド。大歓声が響き渡る中、冒頭で最新作『÷』の楽曲でもラップ冴えわたる「Eraser」でいきなり自身の今ツアーのスタンスの表明と世界観の構築を成し遂げたこと。エールの意味合いも強いだろう、休養を宣言したジャスティン・ビーバーに提供した「Love Yourself」をセルフ・カヴァーしたことに感動だったこと。「Photograph」や「Perfect」と感涙バラードの連投には彼の歌声に酔いしれたがゆえドームが静まり返ったことも印象的だった。案の定、大合唱だった「Sing」と今日イチの盛り上がりを見せた「Shape of You」の高揚感と多幸感は半端なかった。
しかし、東京と大阪のみのドーム公演、約9万人を動員したツアーは即日ソールドアウト。チケットは争奪戦となった。とにかく獲れなかった。運良く獲得できたから結果オーライにせよ、次来る時はもっと動員数増やしてほしい。それが出来るのもエドしかいないわけだから。
セットリスト
01.Eraser
02.The A Team
03.Don’t / New Man
04.Dive
05.Bloodstream
06.Love Yourself
07.Tenerife Sea
08.Lego House / Kiss Me / Give Me Love
09.Galway Girl
10.Feeling Good / I See Fire
11.Thinking Out Loud
12.One / Photograph
13.Perfect
14.Nancy Mulligan
15.Sing
[EN]
16.Shape of You
17.You Need Me, I Don’t Need You
(文・ROCKinNET.com編集部)
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