賛否両論の『ワンハリ』批判に待った!
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが初めて共演したことが話題を呼んでいるタランティーノ監督最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が遂に公開された。90年代後半、日本でも一世風靡した二大スターの共演を観ようと映画ファンならずとも多くの人が映画館に足を運んでいるようで、大ヒットを記録しているようだ。
が、観た人の感想が賛否両論!
僕なんかはタランティーノらしいオタク感とバイオレンスが発揮されていて、ハリウッドに対する愛情に満ち溢れた作品だけに本当に素晴らしい作品だと感じたが、否定の意見も多いようだ。
意味が分からなかった人続出!
特に多い意見がこちら・・・・・・
意味が分からなかった!
ダラダラ長いだけで中身のない映画!
デカプリオとブラピで期待してたのに残念!
何が言いたいのかさっぱり分からなかった!
メッセージが何か分からず期待外れだった!
ディカプリオとブラピの共演だけで観るなって!
うん、その通りだよ。
日本人で予備知識無くして、この映画を理解できる人はまずいないだろう。この映画は「ディカプリオとブラピの共演」って話題性ばかりが先行してるが、もともとはハリウッド史上最悪の事件と言われる「シャロン・テート事件」を描いた実話なのだ。それを知らずして観に行くのはハッキリ言って野暮。知識欲が無いことに呆れると言うか、どんな映画か知らずして観に行くのが悪い。『タイタニック』なら豪華客船が氷山にぶつかるくらいの知識が事前にあった方が楽しめるように、何を描いた映画なのかくらいの知識は必要ではないか。今回の『ワンハリ』は実在した女優シャロン・テートに起こった悲劇的な事件がモチーフとなっているわけだが、そのことではなく、ディカプリオとブラピが共演するってなんか凄くね? って雰囲気だけで鑑賞してしまった浅はかな人が多いのは残念でならない。ミーハーにも程がある。
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『ワンハリ』を10倍楽しむための豆知識
なので、予習は必須である!
けど、だらだらと説明されてもしんどいだけだと思うので、簡潔に!
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で戸惑わないための豆知識
シャロン・テート事件
何度も言うように、この映画はこの事件を描いた映画である。これを知らずして行くと意味不明なのも無理はない。50年以上前の事件だし。1969年8月9日、新進気鋭の女優シャロン・テートが自宅で殺害される。犯人は狂信的なカルト集団の指導者チャールズ・マンソンの信者だった。シャロンは『戦場のピアニスト』のロマン・ポランスキーの妻で妊娠中だった。しかも、犯人の真の狙いはシャロンが住む家の前の住人であって、彼女は人違いで殺害されたという理不尽極まりない事件であった。ハリウッド史上最悪と言われる。映画では『スーサイド・スクワッド』で強烈なインパクトを残したマーゴット・ロビーが演じる。
マカロニ・ウエスタンへの移行
劇中でディカプリオは落ち目の俳優として描かれる。アル・パチーノ演じるマーヴィン・シュワルツ(ジョン・ウェイン主演『戦う幌馬車』などを手掛ける)にイタリア映画の出演を打診されるが、ディカプリオは嫌がる。何故か? これは60年代当時のハリウッドが西部劇からマカロニ・ウエスタンへ流行が移行していったことに起因する。
本来の西部劇とは、先住民や部族を白人が銃で倒し、西へ西へ開拓していくスピリット、道徳感、正義感が描かれるものだが、マカロニ・ウエスタンは、面白ければそれでいい娯楽至上主義で作られたアクション映画群、アメリカ外のヨーロッパで作られた「なんちゃって西部劇」を指す。ディカプリオは偽物を嫌がったのだ。後に、それが西部劇の王道となり、『燃えよドラゴン』などのカンフー映画や、『スター・ウォーズ』などのSF映画にも影響を及ぼしていると言われる。呼称は映画評論家の淀川長治らが少し馬鹿にした意味合いで付けたとされる。
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ディカプリオとブラピは架空の人物であくまで付属品
ディカプリオ演じるリック、ブラピ演じるクリフは架空の人物である。けど、隣人はロマン・ポランスキーだったりと史実と空想が入り混じっているのが特徴。そして、ディカプリオもブラピも付属品でしかないのだ。ディカプリオは落ち目で、(子役の前ですら)泣きじゃくってるだけだし、ブラピはイカれたヒッピーとひと悶着起こす程度。それに二時間を費やすので中だるみ感は否めないものの、当時のハリウッドの空気感を感じるにはいいかも。
先でも述べたように、この映画はシャロン・テート事件を描いた作品なので、マーゴット・ロビーが真の主人公と捉えても良いかも知れない。タランティーノが彼女をどのように描いているのかに注視すれば、この映画が何をしようとしてたのか分かるはず。『イングロリアル・バスター』のように史実を史実としないタランティーノ節が炸裂するか?
ブルース・リーなど有名人も出てくる
舞台は60年代のハリウッドならではの設定も。あからさまな物真似で誰を演じてるか、すぐに分かりそうなものだが、ブルース・リーも出てくる。ブラピに喧嘩を吹っかける。初主演映画「ドラゴン危機一発」以前に、シャロン・テートが出演した『サイレンサー4/破壊部隊』(1968)で武術指導を担当する。TV「グリーン・ホーネット」のカトー役で既に人気者となっていたリー。ブラピが彼のことを「カトー、カトー」と呼ぶので、一瞬戸惑うが、役名なのであしからず。こんな60年代ウンチクが多いところが、オタクを自称するタランティーノらしさか。
ディカプリオが悪役で出演する「FBI」というドラマ、ブラピがアクションを担当した「グリーン・ホーネット」、「コンバット」「対決ランサー牧場」「ターザン」などの作品名が出て来るが、これらは全てTVドラマ。ディカプリオはそこから映画畑に出世を企んでいるが、落ち目で鳴かず飛ばずって役どころ。
こんな感じで、浅くはあるが知っておけば、この映画の展開を堪能できると思うし、ラスト13分で起こる意外な展開をどう貴方が感じるのか自分の感想が持て、タランティーノが描こうとした意味を理解できると思うので、「意味不明」「何が言いたいの」にはならないと思う。バイオレンスが少々抑え気味な印象だけに、過激な描写は苦手って人にもオススメしたい、タランティーノが贈るハリウッド愛に満ちた本作、是非、劇場で確かめてみて欲しい!
(文・ROCKinNET.com編集部)
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