意味不明とは言わせない!
タランティーノがハリウッドに愛を注いだ衝撃作!
シャロン・テート事件を基にした映画だけに、ディカプリオとブラピが奇跡の共演を果たしたのを目的に見に行くと「なんのこっちゃ?」痛い目に遭うだろう。こういうのって予備知識ありきの映画だけに、配給の宣伝マンが情けないなと思うんだよなぁ、公開前に、いろんな媒体で実話であること、と言っても50年も前の事件なだけに映画をより楽しませるアプローチはさせるべきかなと思った。
そもそもシャロン・テート事件って何さ?
50~60年代に活躍した人気女優シャロン・テート。映画『吸血鬼』での共演がきっかけでロマン・ポランスキー監督と結婚。1969年に、彼女が狂信的指導者マンソン率いるカルト集団にロサンゼルスの自宅で殺害された事件。ハリウッド史上最も残酷な事件として語られる。犯人の動機は、マンソンの音楽をメジャーデビューさせなかった音楽関係者が以前住んでいた家にシャロンが住んでいただけで人違いの事件という理不尽で身勝手なものだった。
ハリウッドの黒歴史を美化して塗り替えた!
この事件をタランティーノ流に噛み砕いたのが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』である。タランティーノは『イングロリア・バスターズ』でも史実を語り直しちゃう荒業を見せる人だけに、結構やりたい放題。今回も、その演技や美貌の称讃ではなく、史上最も不幸な女優と記憶される、マーゴット・ロビーが演じたシャロン・テートが実に映画内では幸福に満ち溢れているのが印象的だった。結果、彼女はこの映画の中で不幸になっていない。要はこれって、タランティーノがシャロンに捧げた愛に思える。
結局は、ディカプリオもブラピも実は付属品でしかないのだ。希代のスターである彼らに焦点を当てない。この映画の目的は、タランティーノが抱く「古き良きハリウッド」を懐古しながら、痛ましい事件を彼なりに(ぶっ飛んだ手法で)美化させるための映画だと思う。
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全てのシーンに意味がある伏線の張り方は健在!
『パルプ・フィクション』然り、彼の作品は些細なことでも伏線になり得る。全てがラストに繋がっている。やはり、その回収方法の才能っぷりは健在っ! それを意図的でなく自然体でやってのけるから流石だ。
ディカプリオが落ち目俳優だからアル・パチーノは伊映画にスカウトする、伊映画で稼いだから少し休業期間に入るため、ブラピを解雇する。ブラピはヒッピーの少女を映画村に送り届けひと悶着を起こす、だから別れの時に大酒飲んでヤク決めて・・・・・・振り返ってみれば映画の瞬間ごとに必然性があるわけだ。で、ラストを迎えると。
とにかくラスト15分が痛快すぎて気持ち良い。
「映画は殺人を描いてきた、それを演じた奴らは悪い奴らだ」と言うヒッピーの常識から逸脱した屁理屈は、まるで今まで散々バイオレンスを描いてきたタランティーノ自身の自虐とも捉えられるが、そのヒッピーを火炎放射器とかで●●しちゃうところが流石である。特に犬が男性ヒッピーの●●をあんなことしちゃうなんて爆笑。ブラピもMetooどこいったばりのテンションで女ヒッピーの髪の毛鷲掴みにしてあんな感じ(笑)最近はバイオレンスも抑え気味なタランティーノであるが、やっぱこの人の映画は振り切って暴れた方が面白い。史実は悲惨であるが、それを痛快なカタルシスに解釈を持っていっちゃうんだからタランティーノってのは愛すべき変人だ。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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