邦楽

NICO Touches the Wallsの活動終了の理由を考える

© Copyright 2019 Sony Music Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

突然の活動終了に驚き通り越して無心・・・

NICO Touches the Wallsが活動終了を発表した。
何の前振りも無い突然の発表に驚きを通り越して無心になってしまった。惜しむ間もなく終止符が打たれてしまった。
オフィシャルサイトに掲載されたコメントには“15年という時間、そして作り上げてきた作品たちは、僕らにとって何にも代え難い宝物です。”と感謝を綴りつつも、“さあ。「壁」はなくなった!一度きりの人生、どこまでも行くよ!”と今後の活動をにおわすコメントもされている。

バンドが呪縛になる魔のキャリア十数年問題

気になるのは、この最後の「壁」という表現である。十数年で解散するバンドマンたちは度々、バンドを呪縛のように表現する場合がある。椿屋四重奏もそうだった。表面上では順風満帆に活動をしてるように見える中堅バンドが陥った突然の解散劇はナゼ起こったのかを考えずにいられない。だってショックだからさ。

NICO飛躍の15年はフェス文化の大衆迎合と重なる

思い返せば、NICOのデビュー時は華々しいものだった。光村(Vo)がサザンに影響を受けたからか無二なヴォーカル力を有しながらも(2009年の「SWEET LOVE SHOWER」で桑田佳祐と共演した際のみっちゃんの嬉しそうな姿は忘れられない)、類稀なるメロディメイク・センスと各メンバーの演奏力の高さ、しかも、ルックスにも恵まれ、人気は鰻上りであった。デビュー・アルバム『Who are you?』の衝撃は未だに忘れられない。
同作リリース直後(3か月も経過してない頃)のCOUNTDOWN JAPAN08/09では2番目に大きいギャラクシー・ステージを人が埋め尽くしていた。その光景にロック・シーンの未来が垣間見えた気がした。事実、その頃からフェスは多様な音楽と客層を受け入れながら、大衆文化へと様変わりしていった。ギターロックが持て囃されていた骨太なシーンから、泥臭いバンドが影を潜め始めたと同時に、NICOようなポップ・ロックがメイン・ストリームを占めることになる。まさに、NICOが歩んだ15年はフェス文化の大衆迎合の時期だった。その時期にNICOは見事にハマったと思う。

[PR]

楽曲力・演奏力が高いがゆえに絶頂期の先が見え辛く

しかし、一定の人気を得てからNICOは伸び悩んだとも思える。とは言え、先でも言った通り演奏力が高く、アレンジ力や楽曲の見せ方に長けているバンドだ。音楽に対する貪欲性と、試行錯誤を繰り返し、多様なアウトプットで新曲のたびに驚かされた。楽曲の質の隙のなさは15年間一貫されていた。その多様性もディスコグラフィが何よりもの証明であろう。また、ステージ上でも、毎回、目を見張る凄みを感じていたが(特に2015年のROCK IN JAPANが記憶に残っているが)いつどこで観ようとも絶対にハズレが無いパフォーマンスは、逆に言えば悪い意味で安定してしまっていたとも言えるのかも知れない。聴衆がNICOの楽曲の凄みに麻痺した、贅沢な不幸状態に陥っていたと言える。

偉大な先輩と飛躍する後輩・・・NICOの中間管理職感

また、同期の飛躍も無関係ではない気がする。ワンオク、RADWIMPS、[Champagne](当時)など、ワンマンをアリーナに規模を広げるバンドも多い。一方で、andymori、チャットモンチー、毛皮のマリーなど解散をする同世代バンドが多いことも事実としてある。それが影響してるとは思えないが、ちょうどそういう時期だったのかも知れない。また、KANA-BOONやKEYTALK、ヤバT、マイヘア等、後進も追いつけ追い越せと迫ってくる。かといって、エルレ、アジカン、ホルモン、くるり、横山健、ストレイテナーと偉大な先輩たちは衰えを知らない。

NICOは様々な世代に挟まれた中間管理職のような辛い時期だったのかも知れない。
他のバンドと比較して決して劣っている訳でもないが、そのストイックさがゆえにバンドとしてやれることはやってしまった感、これ以降の飛躍の見え辛さがあったのではないか。NICOとして最高潮の高みに到達してしまったがゆえにバンドを終了させるという苦渋の決断に至ったように感じる。

近い将来、新しい彼らが見れる日を心から望む

発表はあっさりしたものだったが、メンバーは凄く悩んでいたに違いない。そう思うと、寂しさが勝ってきてしまうのだが、なんせ才能のあるメンバーである。新しいバンドや形態で、必ずや我々の目の前に戻ってきてくれることを願わずにはいられない。

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。

[PR]




[PR]

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. THE ORAL CIGARETTES山中がビバラでUVERworld TAKU…
  2. 【ヒットの勝算はネット戦略にあり?】恐怖のピエロ映画『IT』が公開第三週で興収首…
  3. 安室奈美恵の引退への想い~安室という現象が現代の日本女性像を変えた~
  4. ポール東京ドーム初日を観た!
  5. またもコンサート会場が狙われる「米国史上最悪の銃乱射事件」から音楽ライヴ運営の将…

関連記事

  1. 邦楽

    ゲス川谷が再炎上で売名だとすら思えてくる

    今のところ今年の話題をかっさらってるゲスの極みの川谷絵音が…

  2. 邦楽

    ヤバイTシャツ屋さん紅白急浮上で感じる2つの違和感

    最近の紅白では「フェス枠」が設けられているようなオリコンが実施…

  3. 邦楽

    【宇多田新曲2曲が素晴らしい】日本中が彼女を待っていた

    正式な復活を発表していた宇多田ヒカルの新曲が早くも2曲も聴…

  4. 邦楽

    桑田佳祐が「ヨシ子さん」でやりたかった開放

    本格的に音楽番組への出演など精力的なメディア戦略を始めた桑…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

  1. ライブレポート

    ロック・イン・ジャパン2017 2日目ライヴレポート
  2. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 3日目ライヴレポート
  3. 邦楽

    松任谷由実「恋人がサンタクロース」がクリスマスは恋人と過ごす日という社会的呪縛を…
  4. ライブレポート

    COUNTDOWN JAPAN 1718 2日目ライヴレポート
  5. 音楽

    【この夏も話題独占】ジャスティン・ビーバーの恋愛遍歴を振り返り!
PAGE TOP