『ボヘミアン・ラプソディ』の成功で製作者たちが次に目を向けたのは、エルトン・ジョンだった。なるほどなと思った。英国を代表する歌手で世界的知名度も高く、名曲揃いで、LGBTとフレディ・マーキュリーと共通項も多い。
故ダイアナ元皇太子妃に捧げる「Candle in the Wind」(1997年)は世界で最も売れたCDシングルとして記録され、日本のオリコン・チャートでも洋楽としては異例の2週に渡って首位を飾った。05年には事実上の同性との婚約を発表するも、合法的には認められていなかったため、パートナーシップを結ぶだけに留まった。それを松本人志が日経エンタテインメントの連載で「あんだけ地位も名誉もお金もある人が、たった紙切れに固執する理由が分からない」と述べたことがあった。正しく自分も同意見だった。
しかし、その理由こそ、この『ロケットマン』であった。
エルトンの曲は実に内省的な曲が多く、だからこそ物語構築が可能になる。そして、世界的有名な楽曲群は実に切ないものが多い。それは、彼が親から全く関心を持たれなかったトラウマや、そして、自分を金の成る木としか見てない上っ面の恋人など、他人から愛される経験をしてこなかったことに由来していよう。
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成功すればするほど反比例して孤独になっていき、満たされない泥沼な人生。
本作『ロケットマン』は、『ボヘミアン・ラプソディ』同様に音楽家の成功物語だけでなく、苦悩やトラウマなどのエルトンの人間性の闇まで切り込んだ濃厚なドラマに仕上がっていた。ただ、QUEENと違ってバンドではない。その分、尚もパーソナルで、がゆえにセンシティブだった。
最近は『キングスマン』で主人公そっちのけで大暴れしてたけど(笑)
カメオ出演じゃなくてガッツリ大暴れしていた音楽界のレジェンド(笑)#キングスマンゴールデンサークル #エルトンジョン pic.twitter.com/FBV77V972a
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) January 20, 2018
それを見事に表現したタロン・エガートンは流石だった。『キングスマン』ですっかりアクション俳優の印象が強いが、タロンの繊細な演技なしでは、ここまでエルトンの人生は再現できなかっただろう。複雑な人生を送ってきたがゆえの、言葉では言い表せない行き場のない感情も、見事に表現していた。『ボヘミアン~』は口パクだったが、今回の『ロケットマン』は生歌に拘ったという、それだけ楽曲が活き活きしていたように思える。
エルトン史上最高傑作と評したい「Your song」の誕生は決してドラマティックではなかったが涙腺が緩んだ。エルトンの才能が開花したシーンの象徴として描いたことは吉と出ていたように思えるし、何でも無いシーンなのに何故か美しかった。この楽曲の持つパワーは凄いなと再確認した。
あ、あとどうしても触れときたいのは、決して自己主張し過ぎない『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルの相棒ぶりも良かった。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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