圧巻のレニー・ゼルウィガーSHOWだった。『ブリジット・ジョーンズの日記』で世界的にブレイクし、続く『シカゴ』で圧巻の演技を見せ、両方でオスカー主演女優賞にノミネート。あと一歩のところで受賞を逃すも、『コールド・マウンテン』で助演女優賞を獲ったきり、目立った活動もなく2010年頃には第一線から遠ざかっていた。激ヤセ報道とかあって、あ~この人もオワコンなんだなと思ったりした。
ところが、彼女の演技は廃れていなかった!
ぽっと出の2000年前半の頃よりも、だいぶ老け込み、ブリジット・ジョーンズ時の「おかめ納豆」似のハツラツさは失えど、それが晩年のジュディー・ガーランドを演じるのに十分過ぎる説得性を持たせた。見事にオスカー主演女優賞受賞。文句なし。ジュディをリアルタイムで知らない我々世代でも、ジュディが如何にショウビズ界の偉人なのか分かるほどだ。その演技は、モノマネの域を超え、憑依に近かったとさえ思える気迫すら感じた。おそらく、ジュディの晩年というのは酒や薬物に溺れ、幾度の自殺未遂など、語るにはあまりに醜い部分が多かったと思う、しかし、レニーの迫真の演技により美化されているように感じる。
ジュディと言えば、「ニューヨーク、ニューヨーク」のライザ・ミネリのおっかさんで、言わずもがな『オズの魔法使い』の主演の少女である。当然、オズは世界的成功を収め、ジュディは一躍スターダムに上り詰めた。さぞセレブな生活なんでしょうねと思いきや、若くして成功を収めて何でも手に入れてしまった彼女の晩年の実情は、意外にも金銭的な貧しさと、愛に飢えたものだった。
KinKi Kidsでさえ「愛されるよりも愛したい」言ってるのに、彼女は愛を求め続けて、その心の隙間を埋めるように、破滅の道へと自ら迷い込んでいく。
思えば、『ボヘミアン・ラプソディー』のフレディも、『ロケットマン』のエルトンもそうだった。エンタメで頂点を極めた天才たちの人生は、共通して、どこか未完成で脆くて切ない。そして、アルコールやドラッグに溺れていく。そして、睡眠剤や麻酔がないと寝れなくなる、マイケル・ジャクソンやプリンスだってそうだったように。
スポットライトを浴びる華やかな姿と裏腹のドロドロした部分にこそ人間味があり、未熟だからこそ、ジュディをはじめとする天才たち自身や人生が愛おしくなる。この映画を観てて、そう感じた。そう、この伝記映画の見所はそういう暗部にあるんだと再確認した。
そして、苦難を乗り切った時の悟りを開いたかのような”覚醒”したステージは圧巻で、本作でも「Come Rain Or Come Shine」を歌うレニーの鳥肌もんのパフォーマンスが再現されている。もはや、レニー主演の映画を観ている気分で無く、60年代のカーネギーホールにいる気分。
最後、しっとり歌われた「Over The Rainbow」は何よりも感慨深くも物寂しく、力強いものだった。ショウビズの光も影も経験したものにしか出せない哀愁まで演じ分けたレニーには脱帽しか無い。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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