とにかくジェニファー・ロペスの映画だった。
ワガママな性格で有名な彼女が無報酬でも出演したかったというだけあって、長いキャリアの中でも最もハマり役と言って良いほどの見事な演技だった。実は彼女は女優ではなくストリッパーなんじゃないかと思うレベルで(笑)
リーマンショック時のストリップ嬢たちの奮闘を描いた、実話に基づいたクライム・ムーヴィー。コロナ禍で岡村隆史が風俗嬢を軽視する発言があり大批判を浴びたが、この映画の中の女性たちは、もっと、したたかで強欲で逞しかった。逞しいという言い方は決して完全な賞賛ではない、岡村隆史の風俗を蔑んだ発言の批判には賛同するし、女性蔑視もしない。ただ、男性には、どこか風俗系の女性を「買う」という行為によって軽視している部分はあるのだと思う。資本主義的な中で。
それを逆手にとったのが、この映画で、逆にウォール街の男性を手玉にとって、酒にドラッグ入れて伸びきってる間に有り金を盗んでしまおうという犯罪映画。米国式の資本主義に刃向かうアグレッシブさと、男女間の不条理をMeTooとは真逆のフェミニズムでもって、冷酷なまでに経済が冷え切った時世に立ち向かう彼女たちの横暴な行為は、どこか痛快だった。
また、Flo Rida「Club Cant Handle Me」とか、Sean Kingston「Beautiful Girls」とか、あの時(2000年代後期~2010年代初期)の流行歌が流れまくるので、時代を肌感で感じることが出来る。あ~、俺がしがない仕事をしてる時に、こんなことが同じ世界で行われたんだ・・・・・・と庶民感覚で、どこか裕福な生活が羨ましく、犯罪行為を軽蔑的に見ていた。そのリアル感が持てたのは自分とは無縁な世界の話であるが、映画に入り込むことが出来た要因として大きい。
J. Loという人は実に不思議な人だ。音楽方面でも活躍しながら、映画でも平然と活躍している。確かに、こういった存在は多い。マドンナだって、ビヨンセだって、レディ・ガガだってそうだ。けど、彼女らは決して映画で成功してる印象は無く、女優と呼ぶにも臆したくなる。あくまでミュージシャン。しかし、ロペスは両方の畑で難なく活躍し続けている。女優とも呼べるし、歌手と呼んでも違和感がない。なのに、ロペスの場合、その両方で「これぞ!」という代表作が思い浮かばない。けど、キャリアは十分に長いし、人気もあって、実力もある。オールマイティと言えば簡単だが、彼女を表すに美貌と知名度以上に浸透している作品名が思い当たらない。
しかし、先日のスーパーボウルで、御年50歳とは思えないボディラインと、この映画で得たと思える超絶ポールダンスには圧倒された。世界的にも、このパフォーマンスは大好評だったわけだが、同時に同作の好演が、先日発表されたアカデミー賞の主演女優賞候補に挙がらないのはおかしいと言われているほどで、J. Loがキャリア史上いま最も輝いているように思える。間違いなく彼女の代表作となり得るに十分な映画だったと思える。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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