「大嫌いだけど、好き」というキャッチが愛おしい。
ワイリーコヨーテとロードランナーや、ルパン三世と銭形警部など、追って追われる関係性のキャラは数多い。ただ、その関係は実はお互いを必要としており、敵対ではなく信頼と愛情に基づくものであることは言うまでもない。
そんな、追い追われる立場の両者であるが、世界が注目する結婚パーティーが自分たちが原因でめちゃくちゃになったことでタッグを組むというファンサービスも盛り込んだ素敵な作品が、この実写化である。
今、世界が直面しているのは民主主義の脆さと危うさである。民主主義の分断が色濃い現代において、敵対よりも調和を目指す風潮においては、この姿勢は正しい。トムジェリが示した最強のバディは感動すら覚えるものだった。排他ではなく共生こそ、現代的なのだと感じる。
生誕80周年にして初の実写映画化。しかも、3Dアニメ全盛期にも関わらず、オリジナルの2D版を貫き通したことが見事に吉と出ていたように思える。手書き時代からのテイストと言えば『メリー・ポピンズ』や『スペース・ジャム』を思い出すが、そんな、絶妙な違和感が残る、リアル現実とカートゥーンの両世界コラボラティブがたまらない。おなじみハイテンションをそのまま大スクリーンで観れた多幸感たらなかった。
クロエ・グレース・モレッツの存在が映画に華を与えているのはもちろんだが(彼女の存在もカートゥーン的な部分は少し感じるのだが)、なんせアメリカの国民的キャラにして、世界で愛されるトムジェリである、彼らに全部持って行かれそうな中で、絶妙な立ち位置で、本来は第三者が入り込む余地のない両者の関係性に関わっていたのも良い。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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