3月28日に発表される第94回アカデミー賞のノミネートが発表された。濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が作品賞にノミネートされた。日本映画初の快挙である! 他には、監督賞、脚色賞、国際映画賞をあわせて計4部門の候補となった。既に欧州の映画レースで頭角を現わした同作で、アカデミー賞での行方が注目され、外国映画が対象の国際映画賞(旧外国語映画賞)は手堅いと思われていたが、まさか主要賞の作品賞、監督賞に選ばれるとは思っていなかっただけに非常に喜ばしい報となった。
最多候補は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の12部門、次いで『DUNE/デューン 砂の惑星』10部門、スピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』7部門と続く。
アカデミー賞は言わずもがな「投票制」だ、それも順位を付けて投票するシステム。その際に、1位に選ばれた数が少ない作品は除外され、その投票の2位の作品に得票されるということを繰り返し、全体を数え直すやり方。結果、半数以上が支持した比率になったところで受賞作が決まる。この手法では、「この作品が1番良い」ではなく、「嫌いではない、好きな作品だ」が多く集まることが重要となる。そう考えると、今年もそうだが、最有力など、決め手に欠ける候補作の年では、どれもが受賞の可能性を秘めていると言える。
では、『ドライブ・マイ・カー』作品賞受賞の可能性は?
個人的には、ひょっとすると・・・・・・と思っている。国際映画賞は絶対に獲れると思うし、脚色賞も射程圏内だと思われる。問題は作品賞と監督賞。この2つの賞は、作品/監督と一致することが多いので、片方だけ獲るということは考えにくい。近年で作品賞を獲りながら監督賞候補にならなかったのは『アルゴ』『グリーンブック』くらいだ。なので、濱口監督が監督賞候補になっている時点で、かなり作品賞に大手をかけていると言って過言ではない。
では、他作品の受賞の可能性と鑑みて検証していきたい。まず、最多候補の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』だが、同作はNetflixである。今まで『ROMA/ローマ』『アイリッシュマン』『Mank/マンク』など数多くの名作がノミネートを果たしてきたが、受賞では苦戦を強いられてきた。配信映画は主要賞が獲れない、その傾向は未だに払拭できないのではと思っている。
『DUNE/デューン 砂の惑星』はおそらく技術賞を総ナメし最多受賞となるであろうが、作品賞かと問われれば続編ものであることなどから微妙である。『ウエスト・サイド・ストーリー』はリメイクだし、他の作品も今期の賞レースで勢いづいているとは言い難い。
そこで『ドライブ・マイ・カー』である。海外人気の高い村上春樹原作ということや、映画制作者が好みそうな詩的な内容、地味ではあるが、日本映画が、日本映画らしい語り口で紡いだ再生と人間讃歌の物語は、一連の作品賞の中でも異様な存在感を示していると言って良い。良い意味で目立っていると思われる。また、今回のアカデミー賞は、過去最多で多様な国、人種、性別の会員の投票制になっているため、多様性に富んだ選考が期待され、日本映画が選ばれてもおかしくない。奇跡よ、起これ!
(文・ROCKinNET.com編集部)
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