現地時間3月4日に発表されるアカデミー賞のノミネートが発表された。
作品賞をはじめ最多ノミネートは、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』が13部門。続く8部門にノミネートされたのは2017年9月に公開されたノーラン監督の『ダンケルク』。2018年2月1日に日本公開を控える『スリー・ビルボード』が6部門と続く。
従来は「THE ハリウッド」とも言うべき、スター俳優が数多く出演し、壮大なスケールで描かれた、華やかな映画こそアカデミー賞作品という定石があったものの、ここ数年は地味な作品が多い。(2005年に作品賞を受賞した『ミリオンダラー・ベイビー』以降の傾向であるが)今年も、それに倣って小規模作品ばかりになった。
作品賞は『スリー・ビルボード』と『シェイプ・オブ・ウォーター』の衝突かと思われる!
『シェイプ・オブ・ウォーター』は、口が利けない女性が働く国家施設に異星物が運ばれて来るが、言葉を要さないこそ成立するコミュニケーションを通じて、女性と異星物が心を通わすダークなファンタジー。ホラー、ロマンス、社会風刺が込められたオリジナリティ溢れる傑作との呼び声が高い。
『スリー・ビルボード』は、娘が犯罪の犠牲になった母親が、捜査が進まないことの苛立ちから、街の三つの看板に警官に対する苦情を書き、喧嘩を売る物語。重厚な物語を想像するが、意外にもコメディー・テイストもあるという。『ファーゴ』以来となる主演女優賞にノミネートされたフランシス・マクドーマンドや、ウッディ・ハレルソン、サム・ロックウェルが助演男優賞に同作品から二人の役者がノミネートされるなど、演技合戦も見物だ。
ゴールデン・グローブ賞に輝いたのは、ドラマ部門の『スリー・ビルボード』とミュージカル/コメディ部門の『レディ・バード』。10年前まではオスカーの前哨戦と言われた同賞だが、最近は『アルゴ』を除き、アカデミー賞と被らない傾向があるので、『シェイプ・オブ・ウォーター』が最有力か?(ベネチア金獅子賞も受賞)
ただ、『スリー・ビルボード』は、トロント映画祭で観客賞を受賞しており、『それでも夜は明ける』『英国王のスピーチ』『スラムドッグ$ミリオネア』など、同賞を受賞した作品がアカデミー賞も受賞するケースは多いので、まだ行方は分からない。
二番目に候補が多い、ノーランの『ダンケルク』は技術賞の獲得が期待されるものの、主要部門には選ばれないだろう。同作は素晴らしいし、ノーラン監督も才人ではあるが、この作品が彼を代表するような作品とは言い難いからだ。
一番驚いたのは『ゲット・アウト』だ。作品賞をはじめ、監督賞、主演男優賞、脚本賞と、主要部門に4部門に選ばれた! 人種差別を表面的なテーマとして描くも、ストーリーの意外性と物凄い発想で、話題になった本作ではあるが、オスカーでも見事なほど存在感を現した。特に無名であるダニエル・カルーヤが、主演男優に選ばれたことは快挙中の快挙ではないかと思う。周囲の使用人の黒人俳優の、アノ奇妙な演技も賞賛に値するが、助演には選ばれていなかったのが惜しい。ホラーながら、コメディをも描いた意表を突くストーリーが際立ったため、脚本賞の受賞に期待がかかる!
今回の映画賞レース期間で、世界中の映画ファンをキュンキュンさせている、ティモシー・シャラメが若手で唯一、『君の名前で僕を呼んで』で、主演男優賞にノミネートされているのにも注目だ。作品賞にもノミネートされている『レディ・バード』にも出演しているなど、今後が楽しみな俳優なだけに、もしかしたら受賞も夢ではない・・・・・・かも知れない。どうでもいいが、意外にも185cmと高身長らしい。
「#metoo」運動はアカデミー賞にどう影響する?
ゴールデン・グローブ賞でも大いに話題となったが、女性の立場向上・セクハラ撲滅・男女格差是正の風潮はどうなるだろうか? 今年のオスカーは女性候補者の数が2016年と並ぶオスカー史上最多を記録したそうだ。監督賞、撮影賞、編集賞といった伝統的に男性が優位とされてきた技術賞でノミネートを獲得した女性の数は40人にのぼる。
二人の日本人がノミネートの快挙!
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』に特殊メーキャップアーティストとして参加した辻一弘氏がメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート。また、短編アニメ賞の候補にも、桑畑かほる氏が共同監督を務めた『ネガティブ・スペース(原題)』が選出された。久しく日本人の受賞が無いので、是非とも受賞を期待したいところだ。
主要部門のノミネート
●作品賞
『シェイプ・オブ・ウォーター』
『ダンケルク』
『スリー・ビルボード』
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
『ファントム・スレッド』
『レディ・バード』
『君の名前で僕を呼んで』
『ゲット・アウト』
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
●監督賞
クリストファー・ノーラン『ダンケルク』
ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』
グレタ・ガーウィグ『レディ・バード』
ポール・トーマス・アンダーソン『ファントム・スレッド』
ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』
●主演女優賞
サリー・ホーキンス『シェイプ・オブ・ウォーター』
フランシス・マクドーマンド『スリー・ビルボード』
マーゴット・ロビー『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
シアーシャ・ローナン『レディ・バード』
メリル・ストリープ『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』
●主演男優賞
ティモシー・シャラメ『君の名前で僕を呼んで』
ダニエル・デイ=ルイス『ファントム・スレッド』
ダニエル・カルーヤ『ゲット・アウト』
ゲイリー・オールドマン『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
デンゼル・ワシントン『Roman J. Israel, Esq.(原題)』
●助演女優賞
メアリー・J・ブライジ『マッドバウンド 哀しき友情』
アリソン・ジャネイ『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
レスリー・マンビル『ファントム・スレッド』
ローリー・メトカーフ『レディ・バード』
オクタヴィア・スペンサー『シェイプ・オブ・ウォーター』
●助演男優賞
ウィレム・デフォー『The Florida Project(原題)』
ウディ・ハレルソン『スリー・ビルボード』
リチャード・ジェンキンス『シェイプ・オブ・ウォーター』
クリストファー・プラマー『All the Money in the World(原題)』
サム・ロックウェル『スリー・ビルボード』
どういう結果になるか非常に楽しみだ!
(文・ROCKinNET.com編集部)
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