昨年2017年のハリウッド最大のニュースと言えば、やはり大物プロデューサー、ハービー・ワインスタインによる女優に対するセクハラ疑惑で始まった数多くのセクハラ告発だろう。当然のことながら、賞レースが本格化する、この時期にアワードに於ける壇上で、この騒動が持ち上がらないわけない。エンタメ界最高権威であるアカデミー賞でも避けることが出来ないことは必須だろうが(司会のジミー・キンメルがどのように言及するか楽しみではある)そんなオスカーの前哨戦であるゴールデン・グローブ賞は、正しく“女優一色”であった。
ほぼ全員の女優陣が黒いドレスで現れたことも話題だった。また、エマ・ワトソンが「#metoo」ムーブメントを起こした女性と一緒に出席したり、メリル・ストリープや、ミシェル・ウィリアムスも女性の人権を主張する運動家と共に式に出席。(通常ならばパートナーや家族と出席するのが常である。)ナタリー・ポートマンは監督賞候補の名前を紹介する時に、「男性の候補者は・・・・・・」と敢えて言及し話題に。中でも特に注目を集めたのが、セシル・B・デミル賞(功労賞的なモノ)を受賞したオプラ・ウィンフリーだった。
米テレビ史上最も成功した司会者と言って過言ではない彼女であるが、そのスピーチが大統領並みに素晴らしいとして、世界中から喝采を得ている。本人は、そんな意志(大統領選に出馬する意向)はないと言ってはいるらしいが、あまりに素晴らしいスピーチだったゆえに、「#oprah2020」というタグがトレンド入りする事態になっている。彼女に関して言えば、ヒラリーよりも、オバマ夫人よりも、女性大統領になるには適していると思うし、実際にスピーチをしている様子を見聞きして思ったのは、彼女が政治家として(大統領として)の資質がありまくりなことと、その吸引力たるや、申し訳ないがトランプ大統領をはるかに凌ぐもので、女性初の、しかも有色人種としての大統領に相応しいと感じたことだ。出馬すれば絶対に当選はすると思う。
実際に彼女が何て言ったのか、下手な翻訳をしてみたので、下記をご参考に。
“I want all of the girls watching here now to know, that a new day is on the horizon.” @Oprah accepts the 2018 Cecil B. de Mille award. #GoldenGlobes pic.twitter.com/hbquC1GBjm
— Golden Globe Awards (@goldenglobes) January 8, 2018
ありがとう。1964年、まだ私が幼かった頃、母の家で、アン・バンクロフト(『卒業』の女優)が、アカデミー賞で最優秀男優賞を発表するのを見ていました。彼女は封筒を開け、歴史に残る5つの言葉を発したのです。「The winner is Sidney Poitier.(受賞者はシドニー・ポワティエです)」と。ステージに登場したのは、私が、それまでの人生で見てきた中で一番エレガントな黒人男性でした。そして、彼は会場中から称賛を受けていました。私はそれまで黒人の男性が、あのように称賛されるのを見たことがありませんでした。幼かった私に、あの瞬間が、どれほど大きな意味をもたらしたか、幾度となく説明しようとしてきました。しかし、私にできることは『野のユリ』でのシドニーの演技、「アーメン、アーメン、アーメン、アーメン」を模範して、それを私なりの説明とすることです。
1982年にシドニーも、まさにこの場所で、セシル・B・デミル賞を受賞しました。その当時も、今この瞬間も、私が初の黒人女性として同賞を受賞する姿を見ている少女たちがいることにも、大きな意味があると痛感しています。本当に光栄です! (ここで彼女が現在に至るに大きく影響した人物の名前を呼びあげているが省略する)
ハリウッド外国人記者協会にも感謝したいと思います。近ごろ、報道機関が厳しい検閲の中で戦っているのは知っているでしょう。私たちは、報道機関が、汚職から不正まで、まぎれもない真実を掴むために費やしていることは承知の上です。独裁者の秘密から嘘まで。この難しい時代を生き抜くために、私はこれまでにないほど報道の力に価値を見出しています。そして私はこう思います・・・・・・自分自身にとっての真実を語ることが、いま私たちが持てる最も力強い手段だと。そして私は特にプライベートな話を世と分かち合い、声をあげるまでにご自身を強いと感じ、そうする権利があったのだと悟った全ての女性たちを誇りに思います。そして、とても触発されています。この会場にいる私たちは、私たち自身が勇気を持ってした告発に称賛されているのです。そして、今年は私たち自身が語られるべき存在となるのです。
この物語はただ単に、エンターテインメント業界だけに影響を及ぼしている話ではありません。文化、場所、人種、宗教、政治、あるいは職場など、あらゆるジャンルを超越する物語です。ですから、私は今夜、たとえば私の母のように、養うべき子供たちがおり、支払わねばならない請求書があって、そして追及すべき夢があるというだけで、何年も何年も虐待と暴行を耐え忍ばざるを得なかったすべての女性たちに感謝を捧げたいと思います。私たちがその名を知ることのない女性たちはたくさんいます。家事や農業に勤しむ女性たち、工場で働き、レストランで働き、そして科学の分野で働く女性たち。彼女たちは世界を形作っています。彼女たちは私が信じる物語の同士なのです。
他にもあります。リーシー・テイラー。私も名前を知っていますし、皆さんにも是非知っていただきたい。若き主婦であり母であった彼女は、教会から歩いて帰る途中、6人の武装した白人男性たちにレイプされ、道に捨てられました。彼女は男たちから誰かに話したら命は無いと脅されていました。彼女の物語は、当時ローザ・パークス(米公民権運動活動家。)という名の若い女性が働いていた全米黒人地位向上協会に報告され、ローザが主導してこの事件を捜査し、司法による正義を求めました。しかし、ジム・クロウ法(純白人以外の有色人種を差別する法律)がまだ有効だったこの時代、司法による正義は選択肢になかった。犯人の男たちが罪に問われることはありませんでした。リーシーはほんの10日ほど前、98歳の誕生日の直前にご逝去されました。彼女は、長い間、力を持つ男性たちに残酷なまでに打ちくだかれた年月を生き抜きました。そういった男性たちの力に対し、女性たちが勇気を出して真実を語っても、誰にも信じてももらえない時代があまりにも長く続きました。ですが、そんな時代はもう終わりです。タイムズアップ! 彼らの時間はもう十分なのです。
彼らの時代が終われば、私はただこう思うのです。リーシーが真実を知りつつその命を終えたのだと。他のたくさんの女性たちの真実のように、苦痛に苛まれ続けたここ数年、そして今でももがき苦しみながら、この世を去った女性たちがいたのだと。ローザは心のうちにリーシーの真実を11年もの間、胸に抱え、バスで座り続けることを決めたのです。(ローザは法律に背き黒人でありながらバスの席を譲らなかったとして逮捕されたことがある)そしてその真実は、ここにいる「MeToo(女性の人権を守る啓蒙運動として作られたハッシュタグ)」と言うことを選んだ女性たち、それに共感する男性たち、聞くことを選んだ男性たちのうちにあるのだと。
私は、自分のキャリアでは常に自分のベストを尽くしてきました。テレビであれ、映画であれ、どのように恥を経験し、どのように愛し、怒り、屈することなく、克服していくのかということについて。私は人生が与えうる中でも最も醜い物事に対し、抗い、耐え忍ぶ人々をインタビューし、その姿を克明に報道してきました。たったひとつ、そういったひとたち全員に共通している資質があります。それは彼らにとって最も暗い夜でさえも、より明るい朝がくると信じり続けることのできる力です。ですので、これを見ている少女たちには知っておいてもらいたい! 新しい日々は、もうすぐそばまで来ているのだと! そしてその新しい一日がついに夜明けを迎えた時、この場所にいる女性たちと、何人かの驚くべき才能を持つ男性たちを含め、もう二度と「MeToo」と言わなくてもいい時代へと確実に導くリーダーのように、懸命に戦い続ける数多くの素晴らしい女性たちによってもたらされるのだということを!!
(文・ROCKinNET.com編集部)
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