
Amy Sussman / Getty Images for WarnerMedia
ハリウッドで確固たる地位を築いている大女優ジョディ・フォスターは政治映画を制作したことがない。理由は「伝記映画と同じで、作られ方が好きではない(単純に面白くない)と感じることが多いから」だそうだ。『羊たちの沈黙』も言わずもがな、二度目のオスカー主演女優賞に輝いた『告発の行方』なんかも社会問題を扱っているものの政治とは関係性はない。その後、『パニック・ルーム』(02)『フライトプラン』(05)『ブレイブワン』(07)など、フィクションで闘う女性像を(MeTooよりも随分前に)描き続けたように、そもそもが、実在の人物を演じることさえ躊躇うらしい。
そんな彼女が、アルカイダの構成員と疑われ、容疑不明のまま2002年から14年間に渡り、グアンタナモ米海軍基地(キューバ)のテロ容疑者収容所に拘束されたイスラムの男性を描いた実話『モータリニアン』に出演(日本での劇場公開は、2021年10月を予定)。フォスターが演じるのは、男性の弁護を務めた女性弁護士ナンシー・ホランダー。「イスラム教徒であるこの男性の人生と人柄を、本人の視点で描いている」ことから、出演オファーを快諾したという。その演技が評価され、今年2021年の第78回ゴールデングローブ賞で助演女優賞にノミネートされて話題になった。
彼女は同作品の出演について、こうも語っている。差別と暴力に満ちた4年間を経て、アメリカのデバック機能が試される今だからこそ、フォスター自身も突き動かされたのかも知れない。
アメリカの歴史における暗黒の時期の物語。日系人の強制収容や南北戦争後のジム・クロウ法(人種隔離の一連の法律)、先住民の強制移住といったほかの暗黒時代の出来事と同じく、私たちはあの時を振り返って責任を認め、どこで感情に流され、行き過ぎてしまったのかを理解しなければならない。
※引用:雑誌「Newsweek」2021年3月30日号 インタビューより
そして、名作『羊たちの沈黙』から今年で30年だそうだ。Newsweekのインタビューでは同作品についてフォスターの貴重なコメントも記されていた。
フォスターは「あの映画には一種、畏怖の念を覚えている。自分がこれまで関わった中で最高の映画。いつの時代も色あせない。」と賞賛を贈った上で、「ソラマメとキャンティ」(※1)のことはよく言われるそうで、皆があのセリフを真似するのを聞くのは楽しいと語る。ただ、嫌な質問がひとつだけあるそうで、それは「どうして続編を作らなかったのか?」だそうだ。
記憶が正しければ『ハンニバル』の制作時に、フォスターの続投は無く、ジュリアン・ムーアが代役を務めたことも話題だったが、降板理由は「原作があまりに残酷だったから」だったと記憶している。脳みそパッカーンだもんね?
ただ、フォスターは監督のジョナサン・デミと、共演のアンソニー・ホプキンスと共に10年間は続編となる小説の完成を待っていたそうで、それ以外を語ることは拒絶したが、出演意欲はあったというのは初めて公にされたことであり、驚きである。
※1 フォスター演じるクラリスから渡された質問事項の書かれた紙に目を通したレクター博士は、質問について答えず、クラリスの姿や会話から得た情報だけで、クラリスの過去について分析をまくしたてる。クラリスは「その洞察力を自分に向けたら?怖くてできない?」と反論するが、レクターは「国勢調査員が、私を調べようと来たことがあった。そいつの肝臓を食ってやったよ。ソラマメとキャンティ(ワイン)と一緒にな」と話すと口元ですするような動作をし、クラリスに帰るように言う有名なシーン。
フォスターほどの実績と美貌を兼ね揃え、おまけに知性も持つ女優はそうはいない。そんな彼女がコロナ禍で大打撃を喰らった映画産業界についてどう思うか聞かれると、「10年程前から、人々の習慣は変わるだろうと誰もが言っていた。映画館で見るのは大手のフランチャイズ映画だけで、物語を楽しむ作品は全て配信になる、と。でも、コロナ禍でこれほど変化が加速するとは思っていなかった。」と答えた。スコセッシがマーベル批判した際にも、映画スタジオの現状を憂えたことと似通う。潤沢な資金のあるアップル、Netflix、Amazonは良い作品を作れると。ただし、彼女はそれを受け入れようとしている。映画会社と配信会社のパワーバランスは今後も大きくなると。その際は、喜んでiPhoneで自分の演技を見てもらう(笑)と。
※参考引用:雑誌「Newsweek」2021年3月30日号
(文・ROCKinNET.com編集部)
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