この映画を観て思い出したのは、スペインで教会のキリストの絵を描き直した80歳の女性の絵があまりに下手で話題を呼び、逆に人気が出てしまったって例のニュース。絵画然り、音楽や映画もそうですが、アートの世界は優劣を決められないジャンルです。ある人にとっては糞みたいなものかもしれないけど、それによって人生が救われるほど感動する人もいます。価値観は多様です。
主人公のメリル・ストリープは音痴の女性。
その旦那であるヒュー・グラントが周囲の人間を買収して、その事実を隠させ、妻本人は自分に歌の才能があると思わせる。夫婦愛の物語なんですが・・・少し違和感があります。
優しさだけが愛なのか?ってことです。果てや、彼女は己の実力を知ることなくコンサートを開き、嘲笑の対象として大恥をかきます。それが優しさなのか?愛なのか?
ましてや、旦那は若い女と浮気・・・偽善を周囲が演じても、当の本人は「裸の王様」でしかない。主人公が気の毒に見えました。知らぬが仏ってやつ?
しかし、その下手さが話題になり、レコードはヒットしたということです。
これは事実に基づいた話らしいのですが、その部分はエンディングで一瞬紹介されるだけ。惜しいなと感じたのは、この映画にはドラマがないんです。歌が下手な女性がチヤホヤされて、そのままお金にモノを言わせて音痴ながらカーネギーで歌ってしまう。それじゃ、ただの裕福な人間の豪遊でしかない。
けなされ、馬鹿にされ、悔しい思いをしても、どうにかカーネギーでコンサートを開き、レコードが爆発的なヒットとなるという、一種の成功物語でないとカタルシスが感じられない。そういう脚色はすべきかなと思いました。
EXILEの兄ちゃん達なんかはカラオケでは高得点が出るでしょう。けど、歌っていうのは、音符を正確に発声するもんじゃない。人に届けるもの。このあたりの兄ちゃん達共通に言えることは、誰が歌っても同じようにしか聞こえない。EXILEが歌おうが、三代目が歌おうが、なんなら週末の新宿辺りの合コンのカラオケBOXに行けば、同レベルのカッコつけた声色で歌ってる兄ちゃんは、五万といるでしょう。要は「味」がないってこと。
確固たる個性や独自性、大衆の心を掴んで離さない歌い倒すボーカル力。その人しか成しえない声質。それこそ、歌の神髄だと思ってます。
この映画の主人公は、あまりに下手ではあるものの、人に届ける力はあったのでしょう。スペインのキリストの壁画然り、物の良し悪しは時として、思わぬ方向に転ぶものですが、ウケるには相応の理由と惹きつける何かはあると思います。それが好奇の目でも構わない。無個性よりも。
そんな下手な歌手を演じた、メリルの、まぁ芸達者なこと!感心します!
ヒューも『ブリジット・ジョーンズの日記』の続編に出ずに、久々に見ましたが、老けましたね・・・けど、流石は元祖ラブコメの帝王です。ウィットな演技をさせたら上手い!
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