なかなか面白い設定だと思った。戦国武将にスポーツ強豪校の高校生たちが挑む。序盤から『バトルロワイアル』並みの過激な戦闘がはじまり、いきなり、アクションがフルスロットルで展開され息を飲む。冒頭で一気に引き込む求引性は見事だった。剣道部、ボクシング部、アメフト部やフェンシング部と、各々の特性を活かした戦術で、大勢の足軽部隊に挑む様が少年心をくすぐる。これぞ、タイムトリップ・アクションの醍醐味と言わんばかりで拍手を贈りたい気分だった。
ただ、この映画の最大の見所はソコだった気がして残念だ。あとは、失速まではしないが、高校生たちのヒロイズムの絶頂期はそこだった。絶妙に良い役どころの三浦春馬が言う「一所懸命(愛する者を命掛けで守ること)」なんて心揺さぶられるシーンはあるものの、この映画で期待してるのは感動ではない。
この映画が達成すべきは、スポーツ優等生である高校生たちの活躍であり、高校生に華を持たせる展開だ。そうだな・・・・・・言ってみれば『アベンジャーズ/エンドゲーム』の反撃シーンの、あの感じ。見事に、もしも戦国時代で高校生が戦をしたら、ことごとく斬られるだろうってのが、まんま描かれる。当然の展開すぎて面白みに欠ける。現代の文明の利器や、体力も発達しているだろう現代人が一発逆転するカタルシスこそ観たかった部分である。戦国武将もうろたえるほどの予期せぬ高校生の大活躍、予定調和を崩してこそエンタメは面白いのだ。
甲冑も着ないで乗り込む詰めの甘さにはツッコミを入れたくなるし、全員が無傷ならそれはそれで嘘っぽい(不可能だ)、しかし、そもそもの設定が浮世離れしてるではないか、アクション映画として『ぼくらの七日間戦争』のように、高校生の活躍を中心に終始すべきだったように思えるのは、あながち間違えた感想では無いと思える。ヒーローを描くというのは、多少のご都合主義も込み込みで、最終的に観客に絶望的な舞台から解放された優越感を与えることでもあり、それこそが、カタルシスということなのだから。
本広監督は、『踊る大捜査線 THE MOVIE』で、もっとハリウッド的な演出をするのに長けていた人だと思っていたが、日本映画の限界に達し、日本のアクション映画の域に留まってる気がする。先日観た、羽住監督の『太陽は動かない』の方が、ダイナミックだった。
主演である新田真剣佑のスクリーン映えする綺麗な顔立ちに惚れ惚れするも、父親譲りのアクション(殺陣)の迫力には流石としか言いようが無い。現代の高校生らしく、どこか冷めている主人公ながらも、勇気を奮わなければならない、どこか軟弱ながらも力を秘めた難しい役所を見事に演じたと思う。ハリウッドに拠点を移すということだが、それもそれで楽しみだが、日本映画で見れなくなるのは、実に惜しい。
※少し手厳しい評価をしたが、相応に面白い映画だとは思う。あえて、ヒロイズムを描き切れていないだけに惜しいと感じ、ごちゃごちゃ言ったが愛情だと思って頂けたら嬉しいです・・・・・・
(文・ROCKinNET.com編集部)
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