映画レビュー

『IT/イット “それ”が見えたら終わり。』久々の娯楽ホラーの成功作!

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北米で社会現象級の大ヒットを記録!

アメリカでは社会現象級のヒットとなったようだ。映画冒頭で少年を排水溝に引きずり込んだ後に、残された赤い風船。アメリカ各地の排水溝に赤い風船が残されて警察も困惑したという騒動まで起きた。9月の公開初週の興行収入としては過去最高をマーク、ホラー映画としても、『エクソシスト』(1973)の2億3,290万ドル、『シックス・センス』(1999)2億9,300万ドル、『ジョーズ』(1975)2億6,000万ドルを超え、アメリカで初となる3億ドルを突破したという。R指定映画としても、『パッション』の3億7,000万ドル、『デッドプール』の3億6,300万ドル、『アメリカン・スナイパー』の3億5,000万ドルに次ぐ記録を更新中。今年2017年のアメリカのハロウィンでは、劇中のピエロ、ペニーワイズのマスクが人気を誇っていたらしい。

まさにお化け屋敷!娯楽に終始した結果の成功!

とにかく大注目作が日本に上陸すると聞いて、普段はホラーは見ない性質なのだが、ミーハー心と怖いもの見たさで劇場に足を運ぶ。公開初日、田舎の劇場が多くの若者や中年で溢れかえっていたのに驚く。集団で見に来る若者が多い印象を受けた。今時の高校生や大学生は、ホラー映画でも一人で観れないってか?(笑)

肝心の映画の中身については、心理的な恐怖というよりも、ピエロや怪奇現象などのビジュアル的に恐怖感を煽ることに終始した印象だった。正しく、ホーンデッド・マンション感覚だ。そういう意味では、エンターテイメントとして完璧だったと思う。
よく同じスティーヴン・キング原作『スタンド・バイ・ミー』のホラー版と表現されているが、それも同作を成功させている要因のひとつ。舞台は80年代(原作では50年代)で、自分の思春期とは時代は異なるにせよ、感受性豊かな子供にとったら“怖いものは怖い!”という絶対的な恐怖や、夏休み中の出来事というノスタルジック性も大人の鑑賞に耐え得る理由の一つだろう。

S・キングの作品に共通して見られる人間の狂気

キング氏原作の映画やドラマに共通しているのは、主軸となる怪物や怪奇現象の他に、“人間の狂気”がある。分かり易いのが、ドラマ「アンダー・ザ・ドーム」だ。謎のドームこそ恐怖の対象だったが、ビック・ジムのような独裁者が生まれたりと、そのドーム内に取り残された人間の暴走こそ恐怖だった。『ミスト』でも巨大昆虫(?)からスーパーマーケットに逃れた人々の間で仲間割れが起きたの然り、『ショーシャンクの空に』の警官然り、『グリーン・マイル』の乾いたスポンジ然り。この『IT』でも、不良少年の存在や、主人公たち子供の家庭内の問題、DV、性的虐待、過干渉など、人間の問題を浮き彫りにする。キングイズムは健在だ。ピエロは、そんな子供の苦悩に隙入る形で現れるからタチが悪い。

なぜピエロは怖いのか?

実際にアメリカでは「ピエロ恐怖症候群」という病(治療を要するレベル)があるように(ジョニー・デップもそうだとか)、ピエロが恐怖の対象になるのは、常に笑顔維持で表情が無いから何を考えているか分からないことに起因することもあるらしい。某ハンバーガー・チェーンがピエロの存在を無かったことにして久しいが、確かにアレも怖かった。この恐怖症は、この映画の影響も相当だろうが、生理的な部分もあると思う。
しかし、この映画のピエロは、比較的、感情豊かだった。それでも、怖かったのは、襲い掛かる際の奇声とヘドバンの異様性と、神出鬼没さ、ピエロという存在を通り越した化けモンであったことだろう。

原作は少年期と青年期が入り交じった話だという。この大ヒットにより、続編も決定した。久々のホラー話題作である。大いに期待したい。

(文・ROCKinNET.com)
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