原恵一監督の『オトナ帝国の逆襲』は狙った感じはあったものの、クレヨンしんちゃん映画中でも、日本のアニメ史においても名を残す名作であることは変わりない。当時は相当話題になった。それから十数年、久々に甥っ子の熱望で、しんちゃん映画を観る。意外だった。こんなに完成度が高いのか、しんちゃん映画というは。大人が観るに耐え得るテーマ性と、子供が観て楽しめるギャグ路線と、その両方が気分良くなるオチとが見事に調和している。
春日部に何故か横浜中華街ばりのチャイナタウンがある設定から映画は始まる。そして、最近、マサオの様子がおかしい。後を付けるしんのすけたち。マサオは某道場で「ぷにぷに拳」という技を習っていた。事の流れで、しんのすけたちも道場に弟子入りすることになる。もちろん、しんのすけは、ランという道場の美女目当てであるが。ちょうど、その頃、一度食べたら病み付きになってしまうブラックパンダラーメンが大流行。それを食べると攻撃性が増し、春日部の住民はイライラした人間に溢れ、世知辛さを帯びる。それを、カスカベ防衛隊が解決しようと推理を始めるのだが・・・・・・
#映画クレヨンしんちゃん
爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~
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— クレヨンしんちゃん公式 (@crayon_official) 2018年4月16日
すったもんだがあって、ようやく悪の組織を倒したカスカベ防衛隊とランだが、話はそんな単純な勧善懲悪では終わらなかった。ぷにぷに拳の九つの奥義を会得した者だけがぷにぷに拳の聖地で得られるという最終奥義「ぷにぷに真掌」を手にしたランは、悪を倒すために強大な力を酷使する。些細なことも許さない。しんちゃんの父親ひろしの足が臭いのは悪!になってしまうのだ。圧倒的なパワーでもって偏向的な正義を貫徹する。しかし、行き過ぎた正義の暴走は、いつの間にか人々の脅威となっていた。
善悪が入れ替わるストーリーは秀逸だ。例えば、SNSでの私刑なんかもそう。暴行事件があったとする。それを撮影したSNSが事件の決定的証拠となることもある。これは善だと思う。ただし、その犯人の家族構成や親の勤務先まで瞬時に拡散されるのは本当に善と言えようか。善悪は表裏一体であることを諭す。
では、どうしたらいいのか?
ここが流石、しんちゃんである。ジェンカを踊る。これで万事解決。
何を馬鹿げたことをと思う大人こそ頭をぷにぷにしたほうがいい。結局は、そういうこと。世知辛さも、イライラも、自分がどう物事を感じるかの差でしかない。世の中そんなに楽観的でいられるほど甘くはない。確かにそうだ。けど、気楽にジェンカを踊れば気は休まる。これって生き易さの極意かも知れない。
国境を無視して、世界中が繋がって、ジェンカを踊る様子を見ていると、生きやすさの根本が垣間見えてくるようだ。メキシコとの国境に塀を作っても、EUから離脱して難民の受け入れを拒否しても、ジェンカ踊れば万事OK! 安易なメッセージ性が心地良い。しんちゃんは、押し付けがましくないから素晴らしい。
また、しんちゃんに一本取られた。この映画、是非オススメしたい!
(文・ROCKinNET.com編集部)
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