流石は池井戸潤原作だけあって面白い。ハズレが無い。主演に野村萬斎を起用したのも正解だったろう。地上波テレビで飽きるほど見てきた面子の中での圧倒的な異端な存在感。彼の存在が良い化学反応を示していた。重苦しいはずの社会派サスペンスが、まるで狂言独特のリズミカルなテンポで展開されていく様は見事だった。野村萬斎の動作も、意識下のように狂言に寄せていっているような場面もあったくらいだった。
ぐうたら社員の野村萬斎が何故か解雇も左遷もされずに、彼を蔑ろにした者が社内で不当とも言えるような扱いを受け本社から、その姿を消されていく。不可思議な出来事が次々に起こる巨大企業内部で一体何が起こっているのか、目撃した観客は証人として固唾を飲みながら見守ることしか出来ないが、この謎解きが実に面白い。社販のドーナツすら絡ませてくるのが巧みだし可笑しい。
※注意※
ここからは映画の内容(多少のネタバレ)を含んでおります。
ご覧の際は、十分なご注意とご配慮の上、ご覧頂きますようお願い申し上げます。
結局のところはネジを馬鹿にするなと言ったところか。小さな町工場で作られる確かな品質のネジで、この国は作られている。誰しも心のどこかで理解していることだろうが、仮にこの『七つの会議』のような事態が起これば、「たかがネジ」では済まない国を揺るがす大惨事になり兼ねない、想像しただけでも身震いがする。将来なりたい職業に、YOUTUBERが野球選手よりも上位になる時代だ。得体の知れないネットビジネスとか情報商材で派手な生き方に憧れる若い世代が多いと聞く。しかし、職人が作る技術で世の中は回っている。「たかがネジ」ではない「されどネジ」という日本の労働力への賛歌への共感が、興収初登場から連続首位という想像以上のヒットとなり、胡散臭さが充満する世の中だからこそ、それも必然だったのかも。
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そして、巨大企業によるデータ改竄や事実の隠蔽も、大きな問題として提示される。
「改竄」「隠蔽」・・・・・・何度聞いたフレーズだろうか。今の日本が抱える問題でもある。ちょうど一年前は某学園に関わる文書改竄だので国会は大騒ぎだった。この映画が虚構であろうとも、妙に興味惹かれ、説得性があるのは、昨今、現実世界でも厚生労働省の統計問題とか、日産のゴーン問題、トランプ大統領のロシア疑惑など、それこそ世界中で真相追究の報道は多くされているわけで、潜在的に組織への不信感がどこかしらあるからなのかも知れない。けど、単純な善悪などの二元論で語るには複雑過ぎるのが社会。この映画だって正義なんて誰にも見い出すことなんて出来ない。何が善で、何か悪なのか? そもそも善悪の問題なのか? ちなみに、是非を問うたり、議論をここでするつもりはない、俺アホだから胸張って語れないんだもの。そういうのは「朝まで生テレビ」に任せよう。ただ、劇中で正義を貫こうとした野村萬斎が最終的にのほほんと生きていたことに救いがあったように思えた。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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