映画レビュー

【映画レビュー】『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』曲者揃い役者陣の欲まみれな滑稽さが笑える

Motion Picture Artwork (C) 2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

久々に王道の推理映画を観た。
アガサ・クリスティ風の使い古された古典的なテンプレを、移民問題や右傾化なども取り上げて現代風味に昇華させた本作は、王道ながらも、どんでん返しに次ぐどんでん返しで、緻密な脚本に唸りながらも、極上ミステリーとして完璧で、娯楽作として隙が無いほど素晴らしいと太鼓判を押したい気分だ。
ダニエル・クレイグが007とは少し違ったキャラクターを演じているのも興味深いし、ボンドの時と違って体型も緩んでるし、米国南部訛りの台詞回しも独特、(探偵役なので)口数も多く印象が良い意味で変わって面白い。



舞台はクリストファー・プラマー演じるミステリー作家の重鎮と、その印税などの恩恵にあやかる家族が住む大富豪の豪邸。森深い山の中に佇んでいるのが如何にもミステリー映画っぽい雰囲気でそそられる。そのミステリー作家が死んでいるのを家政婦が見つけてから映画は急ピッチで動く。

登場人物も多いが、関係性をきちんと説明してくれるし、そこまで複雑な人間関係でもないので、親切だ。
しかも、役者陣の癖の強さったら無い。ボンクラ息子に『キャプテン・アメリカ』でお馴染みクリス・エヴァンス、作家を看病する介護士に『007』最新作にも登場予定のアナ・デ・アルマス、作家の長女に『フォーチューン・クッキー』のジェイミー・リー・カーティス、長男の未亡人に『シックス・センス』のお母ちゃんトニー・コレット、次男に『エジソンズ・ゲーム』の公開が控えるマイケル・シャノン、その息子に『IT』で記憶に新しいジェイデン・マーテルとクセ者揃い。



なんせ、膨大な資産の相続である。親の資産も、その人の個性であり特性だと思うものの、それに奢っていると痛い目に遭うのも人生。家族に相続を与えようとしない作家に翻弄される家族の愚かさ、己の欲望を剥き出しで罵り合う姿も滑稽でコミカル。笑える。強欲に意地汚い人間的な部分を、徹底して描くことで、この映画の喜劇性が増しているように見えた。これだけの役者を揃えているのだ、面白くない訳がない。そこに複雑に絡み合う家族の思惑や秘密。それが、証言の食い違い、それぞれの動機などに絡み合うから、事件をより迷宮化させ、観客も探偵気分が味わえる。

しかし、事件の概要は早い段階で暴露される。作家と介護士は微妙な友情関係が芽生えていて、パーティー後に作家の部屋で碁をやっていたが、その時に介護士が治療薬と間違えて鎮痛剤のモルヒネを大量に注射してしまう。しかし、作家は(親密がゆえに)介護士を庇い自殺に見せかけようとする。それを、クレイグ探偵と紐解いていくのだが、どうも腑に落ちずにいると、とんでもないどんでん返しが!・・・・・・っとここまでしか言えない。

===ここからはネタバレも含むので未鑑賞の方は絶対に読んじゃダメ===



最後に「My House My Rules My Coffee」と書かれたカップで珈琲か何かを飲みながら、豪邸のベランダから、豪邸を追い出された家族を見下ろす介護士。見上げる家族の逆転構図が、なんとも皮肉で痛烈だ。『最後のジェダイ』でSW新生三部作の戦犯となったライアン監督が名誉挽回できた、至極のエンターテイメントだと思う!

(文・ROCKinNET.com編集部)
※無断転載・再交付は固く禁ずる。引用の際はURLとサイト名の記述必須。


 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でROCKinNET.comをフォローしよう!

ピックアップ記事

  1. 『娼年』の実写化で性に真剣に向き合った監督と、素っ裸で腰振りまくった松坂桃李に敬…
  2. ワン・ダイレクションのソロ実績がビートルズに並ぶ!活動休止後の各メンバーの成績も…
  3. 実写化史上最も成功していると言って過言でない『美女と野獣』に感動する
  4. ロック・イン・ジャパン2017 2日目ライヴレポート
  5. 遂に日本国内興収100億円突破!『ボヘミアン・ラプソディ』はアカデミー賞を獲れる…

関連記事

  1. 映画レビュー

    【映画鑑賞日記】マグニフィセント・セブン

    原作があまりに名作だとハードル高くて困るよね?笑『七人の侍…

  2. 映画レビュー

    『オリエンタル急行殺人事件』名優勢揃い!それだけでも十分に楽しめる!

    ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、ウィレ…

  3. 映画レビュー

    決して米軍万歳ではない『ハクソー・リッジ』でメル・ギブソンが描きたかった本当の事とは?

    メル・ギブソンの映画は苦手である。痛々しいシーンが無駄にリアルで目…

  4. 映画レビュー

    薄暗いシナリオ以上に役者の本域に感銘を受けた『怒り』

    救いのない暗い映画です。最近の邦画はとことん暗く、日本映画の韓国映…

  5. 映画レビュー

    前作に続き続編も成功★『パディントン2』は、チャップリンイズムを継承する傑作娯楽だ!

    笑って泣けて、本当に心が温まる映画とは、こういう作品を言うのだ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気の記事

[PR]
  1. 邦楽

    安室奈美恵の引退への想い~安室という現象が現代の日本女性像を変えた~
  2. ライブレポート

    ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 4日目ライヴレポート
  3. ハリウッド

    今夏最大の話題作『パワーレンジャー』に同性愛描写で再び波乱の予感
  4. 邦楽

    THE ORAL CIGARETTES山中がビバラでUVERworld TAKU…
  5. 音楽

    2017年 勝手に選ぶベスト洋楽 TOP10
PAGE TOP