久々に王道の推理映画を観た。
アガサ・クリスティ風の使い古された古典的なテンプレを、移民問題や右傾化なども取り上げて現代風味に昇華させた本作は、王道ながらも、どんでん返しに次ぐどんでん返しで、緻密な脚本に唸りながらも、極上ミステリーとして完璧で、娯楽作として隙が無いほど素晴らしいと太鼓判を押したい気分だ。
ダニエル・クレイグが007とは少し違ったキャラクターを演じているのも興味深いし、ボンドの時と違って体型も緩んでるし、米国南部訛りの台詞回しも独特、(探偵役なので)口数も多く印象が良い意味で変わって面白い。
舞台はクリストファー・プラマー演じるミステリー作家の重鎮と、その印税などの恩恵にあやかる家族が住む大富豪の豪邸。森深い山の中に佇んでいるのが如何にもミステリー映画っぽい雰囲気でそそられる。そのミステリー作家が死んでいるのを家政婦が見つけてから映画は急ピッチで動く。
登場人物も多いが、関係性をきちんと説明してくれるし、そこまで複雑な人間関係でもないので、親切だ。
しかも、役者陣の癖の強さったら無い。ボンクラ息子に『キャプテン・アメリカ』でお馴染みクリス・エヴァンス、作家を看病する介護士に『007』最新作にも登場予定のアナ・デ・アルマス、作家の長女に『フォーチューン・クッキー』のジェイミー・リー・カーティス、長男の未亡人に『シックス・センス』のお母ちゃんトニー・コレット、次男に『エジソンズ・ゲーム』の公開が控えるマイケル・シャノン、その息子に『IT』で記憶に新しいジェイデン・マーテルとクセ者揃い。
なんせ、膨大な資産の相続である。親の資産も、その人の個性であり特性だと思うものの、それに奢っていると痛い目に遭うのも人生。家族に相続を与えようとしない作家に翻弄される家族の愚かさ、己の欲望を剥き出しで罵り合う姿も滑稽でコミカル。笑える。強欲に意地汚い人間的な部分を、徹底して描くことで、この映画の喜劇性が増しているように見えた。これだけの役者を揃えているのだ、面白くない訳がない。そこに複雑に絡み合う家族の思惑や秘密。それが、証言の食い違い、それぞれの動機などに絡み合うから、事件をより迷宮化させ、観客も探偵気分が味わえる。
しかし、事件の概要は早い段階で暴露される。作家と介護士は微妙な友情関係が芽生えていて、パーティー後に作家の部屋で碁をやっていたが、その時に介護士が治療薬と間違えて鎮痛剤のモルヒネを大量に注射してしまう。しかし、作家は(親密がゆえに)介護士を庇い自殺に見せかけようとする。それを、クレイグ探偵と紐解いていくのだが、どうも腑に落ちずにいると、とんでもないどんでん返しが!・・・・・・っとここまでしか言えない。
===ここからはネタバレも含むので未鑑賞の方は絶対に読んじゃダメ===
最後に「My House My Rules My Coffee」と書かれたカップで珈琲か何かを飲みながら、豪邸のベランダから、豪邸を追い出された家族を見下ろす介護士。見上げる家族の逆転構図が、なんとも皮肉で痛烈だ。『最後のジェダイ』でSW新生三部作の戦犯となったライアン監督が名誉挽回できた、至極のエンターテイメントだと思う!
(文・ROCKinNET.com編集部)
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