映画レビュー

『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』飽和を恒例に変える流石のクオリティ!

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シリーズも五作目となり、いよいよ飽和期に差し掛かってもおかしくない同シリーズだが、「どうせ新しい『パイレーツ・オブ・カリビアン』をやるなら徹底してやろう!」という、完膚無きまでの開き直りとも捉えられる超ド級の一流エンターテイメントを展開させたことで、その潔さに感服したのであった。マンネリズムも微妙な進化を見せることで飽和に陥ることなく、夏恒例の風物詩化する・・・・・・見事にシリーズ続投を成功させているわけだ。巨大な海賊船が登場し、海上でド派手な戦闘をノンストップで繰り広げる。ジョニー・デップの最大の当たり役であるジャック・スパロウの名人芸とも言える演技。ワクワクするようなお馴染みのテーマ曲。その、どれもが「待ってました!」と言わんばかりだ。

この最新作で特筆すべきは、先でも述べた微妙な変化だ。
まず、新キャストの追加。若手俳優の起用が吉と出ている。『マレフィセント』の頼りない王子役で一躍世界の注目を集めて以来、鰻登りで人気を獲得しているブレントン・スウェイツ。また、人気のディストピア小説の映画化『メイズ・ランナー』シリーズで存在感をいかんなく発揮しているカヤ・スコデラーリオ。実力も若手俳優としての知名度も申し分ない二人が、旧三部作で言うところの、オーランド・ブルームと、キーラ・ナイトレイのポジションをしっかりと受け継いぎ、作品に華を添え、新風も与えている。同じシリーズを長期間続けるというのは、変えないところは変えずに(主人公ジャック・スパロウの存在)、こうして新たな風を入れることが重要なのかと思う。

一作目が2006年だ。それだけシリーズも長期的になってきている。ジャック・スパロウも歳を取った感じがする。お馴染みのヨタヨタ歩きも、どことなく老いを感じる。終始、酔っ払っていて駄目っぷりが目立つ。11年前のキリッとしたカッコ良さは(最初からヘラヘラしたキャラではあったが)、さほど感じさせない。こういう細かな演技描写にも、ジョニー・デップの芸達者ぶりが垣間見える。無責任で他力本願で、何故か危機をそつなく回避する、愛嬌のあるジャック像は健在だ。

今回はジャックが若かりし頃に、ハビエル・バルデム演じる“海の死神”サラザールから、全ての海の呪いを解く力のある伝説の秘宝“ポセイドンの槍”を奪ったことで、壮絶な冒険が始まる。驚いたのは、若かりしジャックを演じた俳優のデップに似せた演技の妙である。てっきり本人かと思っていたが、知識深い方に教えてもらったら、彼はAnthony De La Torreという俳優兼ミュージシャンだそうだ。ジャック・スパロウを演じるだけでなく、デップにも寄せていかなければならない難問を見事にやってのけ、感心する。『ベンジャミンバトン』でブラピが全然若返らなかったのを観て、映画では、どんな技術を以てしても“若返りだけは無理”だと確信したが、良い意味でモノマネ名人な若手俳優を起用することで成し遂げられるんだなと思った。

世界のポール・マッカートニーのカメオ出演も微笑ましく、もう今回も過剰なまでの娯楽テンコ盛り! 期待を裏切らないシリーズ最新作、これを観ずに今年の夏は始まらない。

 

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