時代の寵児であるジェニファー・ローレンスが果敢にもキャリア初となるフルヌードに挑戦していると聞き、興味が湧く。しかも、大恋愛劇でイケメン俳優に抱かれるのではなく、国家機密諜報部員としての訓練の最中で、自分をレイプしようとした同僚の男に「ヤッてみせなさいよ!」と挑発するものだから面白い。この女、そんじょそこらの女優とは訳が違う。
散々ハリウッドはロシアを悪として描いてきた。それが2000年代には9.11の影響から中東に変わり、今では経済発展も著しい中国や、核開発で米と対立する北朝鮮へと変化している。そんな2010年代後半において、米露の対立を未だに描くことが逆に珍しい。
映画はジェニファー演じる主人公と米側のスパイの個人を描いてはいるものの、スパイ合戦の様を見ていると、冷戦や対立姿勢は決して終わらないことへの暗示とも思える。西側の思想を真向から否定し、ポケモンGOを悪魔と例えたり、同性愛を法律で禁じたり、パンク・バンド「プッシーライオット」が政府批判、風刺曲を歌ったことで国から監禁されたニュースが流れたことも記憶に新しいが、やっぱロシアって社会主義国家なんだな~、お国のタメならここまでやるのかと連想させる描写も多い。ロシアが怖くなる、ヘイト・ロシア映画でもある(笑)
この映画は、とにかくエグイ!
暗いとか重いとかってよりも的確に表現しているのが「エグイ」だろう。
裏切り、拷問、国家至上主義など、自分の倫理観に無いものばかりで胃もたれ感が凄まじい。
しかも、静かだ。007やMIならド派手な音楽に飾られ、音楽によって次に来るのがどのようなシーンなのか察しが付くところではあるが、この映画は無駄なBGMを極力削ぎ落とした静寂の中で、誰が味方で誰が的かも曖昧な状況下、自分がいつ危険に晒されるかも分からないから油断ならず、一見は気高く振る舞っているように見えるジェニファーだが、その眼差しはどこか怯えており、緊迫感が止むことなく、居心地の悪さまで覚える。要するに、俺はスパイには向いてないってことでもあろうけど、娯楽的ではないが、同監督作『アイ・アム・レジェンド』の手法が、スパイ映画に独特な奇妙な空気感をもたらし、功を成しているのに本気具合を垣間見る。
そして、最終的に一気に伏線を巻き取る見事なシナリオに唸る。ジェニファーのほくそ笑む笑顔に恐怖すら感じる。この女は、本当に只者ではない。#MeTooとか敢えて言わずとも男を飲み込む凄味がある。
『レッド・スパロウ』
脇役からして本気が伝わってくる!
存在だけで重厚感!こ・・・濃すぎる! pic.twitter.com/54hGCzSazi— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) 2018年4月26日
そして、キャスティングが、まぁ凄い!
この手の濃厚な映画にはピッタリなジョエル・エドガートンも良かったし、ロシア側のお偉方に、ジェレミー・アイアンズ、キーラン・ハインズと濃過ぎる面子が嬉しい。中でも諜報員養成所の講師の、シャーロット・ランプリングの存在感。いるだけで作品の空気をかっさらう、その妖艶で奇妙な存在に跪かざるを得ない。決して好きと薦んで言いたい作品ではないけど、久々に重厚なサスペンス映画を観たような気がした。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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