マーベルに何を期待するかにも因ると思うが、個人的にはこれで大成功だと思っている。最近のマーベルはコミカル路線に走っている傾向がある。もともと、シリアス路線だった『マイティ・ソー』も、ここにきて『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』顔負けのコメディに方向転換。ソーとロキが兄弟漫才を繰り広げると思いきや(過去の因縁や確執はどうした?)、凶暴過ぎて手に負えない怪物ハルクともコントの如く絡んでいくのが新鮮だった。主演のソー役のクリス・ヘムズワースもリブート版『ゴースト・バスターズ』(2017)で、そのコミカル演技を思う存分発揮していたのが活かされていた。
感心なのは、『アベンジャーズ』の時系列を崩さない所がいい。ハルクも『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)から行方知らずで、その間ずっと、とある惑星で戦闘奴隷として監禁されていたり、前作でアイアンマンと超絶的な喧嘩をしたハルクがトニー・スタークに気まずさを感じている発言をしたりと、各々のキャラの細かな事情まで粗末にしないのが凄い。監督が異なっても崩さない所が素晴らしい。
まずは、ソーが燃えたぎる溶岩の怪物に捉われているところから映画は始まる。そこから逃れる時に何百もの怪物がソーを襲うが、ハンマーで応戦する、BGMが、ツェッペリンの「移民の歌」で、これが意外によく作品とマッチしていて、それだけでもアドレナリン大放出である。「移民の歌」は、北欧の民ヴァイキングが新天地へとやってくる様を表す曲であるが、まさしくこの映画の内容そのままともいえるド直球の歌詞ではないか? 終盤にもあるが、もはやソーのテーマ曲としてもいい!
ソーは神である。雷神だ。にも関わらず、神話的なテイストは保持されたにせよ、今回は『アベンジャーズ』(2012)で見せたような「THE 英雄」のような絶対的な存在でなく、どこか軟派で弱々しい。最大の武器であるハンマーも壊されたし、ハルクと同じく戦闘奴隷として監禁されるし、神としての威厳は皆無である。それを終盤でひっくり返すように活躍する姿がカッコ良いし、観ていて痺れる! やはりヒーロー映画はDCのような小難しさよりも、単純なヒロイズム、カタルシスに終始するに越したことはない。
加えて、名女優であるケイト・ブランシェットのアメコミ映画での演技が、これまた絶妙なのもいい。シリアスな作品にこそ俳優の演技力は真価を問われるが、こういったコミカルな映画にケイトのような名優が、その才能を発揮するところにも、この映画の面白みはあろう。さすがに二度のオスカー女優である、派手なアクションが出来ないのか、戦闘シーンでは多少物足りなさを感じたが、彼女の存在が自由過ぎるコメディ作品である本作に箔を付けていたのは間違いない。
『マイティー・ソー バトルロイヤル』
2017年11月3日(金・祝)日米同時公開
来年2018年春に公開予定の『アベンジャーズ』最新作にも繋がる重要作なのでマーベルファンならずとも観ないわけにはいかないでしょ!
(文・ROCKinNET.com)
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