今年2018年の映画界隈で一番の話題と言えば『カメラを止めるな!』のヒットの他ないだろう。たった2館での上映から全国300館に拡大し興収も20億円を超え(2018年9月16日現在)、通常の大手映画会社製作の日本映画の平均以上のヒットとなった。未だにヒットは続いている。無名の監督制作で、無名の役者しか出ていないインディーズ作品が、何故ここまでのヒットになったのか? ヒットの要因を探るのは野暮ったいことだと分かった上で、妄想してみようと思う。
TOHOシネマズの英断が300館の拡大上映に繋がった!
この『カメラを止めるな!』の公開は6月23日。そこでの評判がすこぶる良かったのを受けて、SNSで評判が徐々に拡散し始める。それを鑑みたTOHOシネマズが、夏休みに当たる8月から上映館を増やそうと7月25日に決めた。公開から約一カ月後のことである。この決断や増館ペースは業界の常識を考えても、有り得ないくらい早い。そもそも、7月に決断して映画館が空いてるわけがないのだ。『Mr.インクレディブル』『ジュラシック・ワールド』『ミッション・イン・ポッシブル』等ハリウッド大作が目白押し、夏休み映画で映画館の上映スケジュールはパンパンなはずだから、隙入る余裕は無かったはずだ。けど、強引に入れた。ヒットの確証がないにもかかわらずだ。TOHOシネマズが親会社である東宝作品並みの手厚い優遇をした奇跡が要因としてある。この英断がなければヒットは絶対に無かった。
日本人特有の判官びいきが人気に拍車をかけた!
そして、次に俳優が全員「無名」である、作品自体がインディー作品であると言うことも大きい。アメリカでは99年に『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が単館から世界的な話題を呼び大ヒットしたような例が時たま起きるが、単館系が当たるというのは日本では非常に珍しい。日本人は観る映画を選定する際に、役者などネームバリューに左右される傾向があるからだ。俳優がバラエティ番組に出て宣伝しまくれば、興収ランキング1位とか常套例ではないか。
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けど、最近は、そういうのにウンザリ気味だと見受けられる。映画興収の国内シェアで、ここ十数年は、あれほど邦画が強かったのに、最近では洋画が勝っているように。有名なタレント疲れが起きてるのかも知れない。それに比べると、今回の『カメラを止めるな!』の役者は誰も見たことない無名ばかり。映画を観てて思ったのは、無名役者でも味がある役者が多いってことや、演技の巧さなどで言えば、彼らの方が苦労してるせいか、有名なアイドル役者と比べると引けを取らないということ。何よりも、その人となりが分からないから、虚構がすんなり入ってくる(映画の人物そのまま受け入れられる)ということである。
それと、無名だからこそ、日本人は「判官びいき」したがるのである。大相撲で横綱が平幕に負けると喜ぶだとか、有名なバンドよりも無名なバンドを聴き込むとか。今年2018年の夏の甲子園だって優勝した大阪桐蔭でなく、準優勝の金足農業が持て囃されたり。そういう傾向ってあるじゃん?
演技に優劣が無いように、売れてる役者・売れてない役者の差は運とかマネージメントなのかなとさえ思ってしまうほどの好演だった役者陣。売れてても下手糞は山ほどいるからね(((^皿^;)#カメラを止めるな pic.twitter.com/5cp5SxhsB2
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) 2018年9月26日
ネタバレ禁止だからこその口コミ伝染力
そして最たるものは「ネタバレ禁止」これに尽きる。この映画は予備知識が無ければないだけ楽しめる映画である。何も言うことが出来ない。ならば、言うことは一つしかない・・・・・・「とにかく絶対に観てみて!面白いから!」である。「ゾンビ映画なんでしょ?ホラー映画なの?」「ゾンビ映画なんだけど、ホラーでもなくて」など、ムズ痒さを助長させる感想しか言えない。結果、勧めることしか出来ないのだ。で、気になるから観てみる。で、実際に「なるほどな」となる。で、また同じく「とにかく観て」と口コミが“得体の知れない映画”のまま伝染拡大していく。映画のジャンルすら言えないところに勝算はあったと思う。
TOHOシネマズの決断と、日本人の判官びいき、ネタバレ禁止の口コミ拡大、この三点が絶妙にマッチして『カメラを止めるな!』現象は巻き起こった。そして満足度の高さにも誰もが納得し、ヒットに勢いを付けている。止まらないのはカメラではない、この映画の人気である。果たして、どこまでのヒットになるか。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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