テレビ業界の不調が叫ばれて久しい。ライフスタイルの多様化に伴う風潮の中で、高視聴率番組の不在、長寿番組が軒並みに終了した。並行するように、YOUTUBEを始めとする、ネット媒体が頭角を現していると言われている。先日も、昨年の日本中を揺るがしたSMAP解散後に、元メンバー3人がAbemaTVで放送された「72時間テレビ」に出演。累計視聴者数は6000万とも7000万とも言われ、大きな話題になった。あくまで累計数であることや、TV視聴率のビデオリサーチの調査方法とは全く異なる為、どこまで正確に比較していいものか分からないが、ユニークアカウント数が1日150万viewと仮定されており、100万世帯(※100万人ではないところに注意)の視聴でTV視聴率が1%の換算と言われているので、約1.5%くらいの視聴率と捉えられる。反響の割には意外に少ないと思われがちだが、新規媒体として、それだけのアクセス数を稼いだことが評価に値する。
ネットはテレビに取って代わるのか議論
で、浮上する仮説としては、至極当然に「ネットはテレビに取って代わるのか」という疑問である。筆者の意見を述べさせて頂くとすれば、答えは「NO」である。たとえば、YOUTUBERが今若年層で人気を博している。ヒカキンや、はじめしゃちょーなど、人気のYOUTUBERだと、100万や300万アクセスなど簡単に超える数値だという。しかし、先述の通り、これをTV視聴率に換算すれば1~3%以下に相当し、正直、不調と言われているテレビ番組の視聴率以下である。しかも、TV以上に視聴者年代が偏っている。非常にニッチな分野に思える。
そもそも論になるが、ライフスタイルの多様化によりお茶の間で家族みんなでテレビを囲んで・・・・・・という景色は、とうの昔に無くなった。もう20年以上前から言われていることだ。そこにインターネットという媒体が生まれ、動画配信が流行し、その分野で人気者(YOUTUBER)が誕生したことが、如何にもテレビ的な側面を持ったことから、主流メディアとしての“陣取り合戦”のような構図をこぞって雑誌などのマスコミやネットニュースをはじめ訴え出した。しかし、この発想自体が愚かだと感じる。テレビとネットは「視聴する」という点でこそ共通項はあるが、動く予算や、スポンサーや芸能事務所、放送倫理など関係各所の規模感からして全然違う。何よりも、公共物の電波を通してるのか、比較的自由に配信しているかの責任の重さも違う。比べる対象同士ではないのだ。
『シン・ゴジラ』地上波初放送に見る日本のTV依存の現状
テレビの影響力が大きいのは、今も昔も日本がテレビ依存の国だからだ。情報は全てTV発信で、流行もTVから生まれてきた。地震が起これば、ついついNHKを付けてしまう国民心理も最たる例だ。
最近で言えば、映画『シン・ゴジラ』だ。累計興収は80億円の大台を突破、動員も550万人を超える2016年を象徴する映画のひとつとなった。しかし、一年前の映画である。散々語り尽くされた感があるものだから、つい先日2017年11月中旬に地上波で初放送された際に「これほど話題になるの?」と個人的には感じた。平均視聴率は15.2%。ツイッターでもトレンド入りし、改めて、民放の影響力を感じずにはいられなかった。
他で言えば、バンドなんかもそう。フェスで人気を博したバンドが、地上波のMステなんかに出たり、地上波のドラマ主題歌やCMタイアップ曲に抜擢されれば、たちまちミュージック・ビデオのYOUTUBEの再生回数が急上昇するように、地上波のTVから飛びついてくる人の割合は相応に大きい。
YOUTUBERも結局は一般人!ネット配信はサブカルに終わる?
それと肝心なのは、芸能人とネット界隈の有名人の、知名度、カリスマ性、タレント性の差もある。例えば、YOUTUBERを例に挙げるとする。絶大な人気を誇るYOUTUBERもいるらしいが、やはり相対的に芸能人と比べれば、彼らの知名度はたかが知れている。
松任谷由実の言葉を借りると、「どんな冴えないアイドルでも、その子の後ろには、そのスポットライトを浴びれなかった数万人がいる」のだ。芸能人は選び抜かれた逸材で、その上で、徹底した稽古をし、小さなライヴハウスや演芸場で地道な活動を通して力を付けていき、多くのライバルの中から凌ぎを削って表舞台に立っている。YOUTUBERは、そこまでの努力は一切必要としない。言ってみれば、秀でた才能が無い。時折、YOUTUBERがテレビに出て完全に近所の兄ちゃん(素人)化して、たいしたコメントも出来ない様を見るように。YOUTUBER 配信やめたら ただの人――
YOUTUBERを観てて感じるのは、松村邦弘・松本明子のアポなし時代の「進め!電波少年」を柔くした感じ。規制の中でしかTV番組を観たことのない世代には、YOUTUBERくらいの刺激が調度いいのだろうけど、電波少年以下のことを今更見ても面白くもなんともない。個人的には、そういう世代。だから、一部の熱狂的なファンしか見ない。如何にもサブカル的である。これが現段階でのネットの限界を感じる部分なのだ。テレビ番組はスポンサーはじめ、芸能事務所など、関係する機関が、実に多い。YOUTUBERはそういったしがらみが一切ない。手軽な分、責任も無い。そこがプロか素人芸かの違いである。
今回のAbemaTVの成功は元SMAPの関心の高さが主要因
72時間テレビの成功はネット媒体の勝利でなく、国民の元SMAP三人への興味の結果の方が理由付けとしては大きいような気がする。累計6000万人の視聴は紅白やW杯を超える物凄い数字だ。それだけSMAPという存在は改めて国民的だと感じた。 #SMAP #香取慎吾 #稲垣吾郎 #草なぎ剛 pic.twitter.com/S204roZyZr
— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) November 5, 2017
ネットを介す媒体が現時点において、テレビの領域が浸されるだけの影響力を持っているかと問われれば、未だに無いと思う。今回の元SMAPの番組も、ネット配信という手法が注目されたのではなく、元SMAPへの関心に過ぎないのでは?
ただ、AbemaTVも、話題性という観点で捉えれば、元SMAP3人を引き抜いてきた作戦は見事だ。時として、ネット配信がテレビ以上の話題をかっさらう可能性も示唆したネット配信史初の出来事だから。まして、無料である。ここまでテレビ的なネット配信媒体は今まで無かった。掻い摘めば、ネット配信がお茶の間の何処まで浸透するかだけの差になってくるだろう。地上波は風呂上りにソファーに横たわってリモコン「ピッ」で済む。AmebaTVも相応の手軽さになったら、テレビは完全に食われるだろう。あとは、企画力勝負になる。
地上波の企画力が低迷しているのは如実で、フジテレビを始め人気番組終了の噂も続く。例えば、とんねんるずの保毛尾田の件も含め、規制によってテレビがつまらなくなってると言う。しかし、今回の元SMAPの番組もそこまで大したことはしてない。森君が出ただけだ。ましてや、地上波でも「イッテQ」や「月曜から夜更かし」など、十分に支持される番組は存在する。何でも規制のせいにしては話は始まらない。そりゃ、公共の電波を使用している分、テレビはコンプライアンス的に肩身の狭い思いはしているだろうし、自社メディアに過ぎないAmebaTVの自由度までいかないというのも理解は示す。
しかし、根本は、規制や内容の問題以前に、何が人の関心を引くか、番組を作る側のセンスが良いかに尽きると思う。地上波は逃げているだけ。逃げる地上波、挑戦するAmebaTV! そこにネットだ、テレビだのフォーマットは関係ない。だから、テレビも大風呂敷広げて、ジャニーズや大手事務所と忖度し、適当なことをやってる時代じゃなくなったという一種の警告が、AbemaTVの結果だったのだと思う。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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