今年個人的に要注目しているアーティストの一人にSKY-HIという若きラッパーがいる。数年前にロッキンの会場で、一番小さな“DJブース”でパフォーマンスしているのを横目で見ていたような気がした程度で、じっくりとお目にかかったのはGWに開催されたスガシカオの20周年を祝うためのイベント“スガフェス”だった。そこで、ダンスグループのイケメン兄ちゃんが趣味や道楽でラップをやってるレベルではないことに驚愕するわけだが。
彼は、ご存知の通り、あのAAAのメンバー日高光啓だ。私はAAAをさほど知らないのだが、ラップのテクニックにせよ、長き芸歴が成すステージ慣れした圧倒的パフォーマンスにせよ、ほぼ完成された状態で、今やソロとしてコアな音楽ファンの間でも頭角をあらわし、話題沸騰中なことは言うまでもない。
そんな彼が急遽「キョウボウザイ」という新曲を発表した。
まだ、「Trap系のビートいくつか作ってるトライアル中」という仮状態での発表。それが意味することは何か? そう、彼は黙ってられなかったのだ。組織的犯罪処罰法改正案(通称・共謀罪)の内容の曖昧さ、法律としての隙を国民に納得させずに強行採決した感じのある状況を、彼はおとなしく見過ごすことができなかった。いちアーティストとして、いち有権者として。楽曲が完成するのを待っている余裕が無かったのだろう。
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そもそも、日本はテロ対策の国際条約には全て調印しているし、日本の刑法には、予備罪・準備罪があるから、テロ対策には共謀罪が無くても十分に対処できている。しかし、277個の共謀罪の対象となる罪には、政治家や警察の犯罪が見事に外されている。要は、共謀罪とは権力の強化に繋がる恐ろしいものと危惧される意見がある。権力が市民を監視し、物言う市民を委縮させる未来が待っているのか。ともすれば、言論の自由、表現の自由は失われる。
こういう時こそ、作家やアーティストの意見が重要になると思う。そんな中で、ここまでストレートに意見を発したSKY-HIのソウルには脱帽しかない。彼は賛否の意見を明確にはしていない。ただ、歌詞を読めば、状況を憂いているのは一目瞭然だ。こんな個性が10年もダンスグループに埋もれていたのは勿体無かった。いや、このタイミングだから良かったのか?
昔から日本のラップは本当にどうでもいいことばかり言っていると思っているのだが。(そもそも、ラップ文化自体に社会性が絡むか否かは微妙だけども、再び日本でも『フリースタイルダンジョン』が話題になりラップ・ブームが再来の予感がするも、90年代のアメリカの真似事を未だにやるのか?って気もしている)RIP SLYMEなんかは、大衆POPとして、その辺を開き直って、技術を突き詰めている感じはするけど。最近だと、岡崎体育なんかもそうか。日本ラップは大衆に受けるために意見よりもキャッチーさを積極的に取り込んできた。ケンドリック・ラマーや、フランク・オーシャンのように、自らのリリックが魂の叫びであるような、世に一喝を入れるようなアーティストは誕生しないものかと思ってた矢先だった。
ちょっと意見を言おうものなら、ネットが炎上するがゆえ、委縮している日本の音楽界。
そんな中で彼が素晴らしいのは、誰もがしなかったことをやろうとしている点にある。
そして、(稚拙な表現かも知れないが)正しく彼の行いは誰よりも“ROCK”である!
木曜日朝四時 国民的な行事
色を変えた常識 説明ならば放棄
何らかの事情に 何らかの理想に
良い悪いの定規 それでつくるなんてホント正気?燃えた家計簿に 火消しをするように 木を隠した森 丸出しでSorry
シンゾウには毛が生えて舌の数は無尽蔵 HP残り36ポイント
保護するのは秘密の方でテロと五輪歪な項で
組み合わせてできたそれで治安維持しようぜ
右左錆びたシーソー 気にしない アホらしいよね
決して否定はしない 絶対悪などいやしない
ただ有権者の立場で一意見だけ発したい
だってラッパーはニュース出てもギャグラップやめてくれもう沢山 胡散臭い
海岸からミサイル 対岸にはトランプ
国内外この調子で既に点る黄色のランプ
なんでこんなタイミング
安心できる方がおかしい 半信半疑
朝目覚めりゃ終わってる会議保守にもリベラルにもクジラックスや詩織さんにも愛を
それはそうと強行で許容で共謀てねえやっぱちょっとキョウボウじゃない?
ちょっとキョウボウじゃない?
ねえやっぱキョウボウじゃない?
ちょっとキョウボウじゃない?
謝った方がいいかソウカ
たまったもんじゃない
(文・ROCKinNET.com編集部)
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