実に淡々とした幕引きだった。
これまで日本の芸能史では多くのスターが引退や解散をしてきたが、そんな中でも最も中身も感情も余韻も無い最後のメディア出演だった。問題は、それが戦後最大のスター・グループSMAPであるということだ。
阪神淡路大震災、オウム真理教地下鉄サリン事件、山一證券倒産に象徴される日本経済どん底の不景気で日本が大きく揺れた時、「がんばりましょう」と歌って踊る姿は、今までの男性アイドル像以上を覆すほど親近感と共感性を感じ、大衆はSMAPを受け入れた。時代が彼らを欲していたと言えよう。SMAPは必然的に表れたのだ。
活動範囲は芸能だけに留まらず、日中関係友好の証として温家宝首相を迎えたのは他でもない、日本の大衆演芸の象徴としてのSMAPだった。
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20代後半の若さで紅白の司会を何年も務めた中居正広、その後も多くのバラエティ番組を持つようになる。アイドルとしては前代未聞だった。
日本男性を長髪にした木村拓哉の存在、略語が当たり前の昨今だが、そもそも略語は彼を「キムタク」と略したことで一般化した。
従来のアイドルは一過性の人気の中でしか輝くことは出来なかったが、SMAPはその方程式を見事に覆す。アイドルのドラマが高視聴率を記録し、CDを100万枚売り、25年の長きに渡って活躍、国民的な存在になれることを証明した。
長続きしたのは、彼らの不完全性にあった、森の脱退、木村の結婚、草彅・稲垣の逮捕など、話題性に事欠かない。事件が調度いい周期で起こる。草彅の件の際には(個人的には大騒ぎしすぎな印象も拭えなかったが、地上デジタル大使ということもあってか)故・鳩山邦夫総務相(当時)が批判コメントを出す。SMAPは政治を動かし、国民の関心を集め、自らを風化させない類稀な存在だった。
SMAPというのは<社会現象>そのものといって過言でない。この先も、そうあり続けると思っていた。
果てや、彼らが還暦まで今のまま活動していれば、個人的な妄想の話になるが、アイドルとして初の国民栄誉賞も、おとぎ話ではないとさえ思っていた。
国民の誰しもが望んでいない解散、する必要のない解散。
2016年12月26日、日本という国からエンターテイメントの象徴が消えた。
もう彼らの代わりは出てこないだろう。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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