フェスを止めない。音楽を止めない。この当たり前のような言葉が如何に困難で、もはや奇跡的なことになっているのか、我々は嫌と言うほどに味わってきた。rock’on主催のフェスはこれまで何度も中止に追い込まれた。2021年の春にはワイドショーが、まるで犯罪者のような扱いでフェス参加者を映し、夏は開催2週間前に茨城県医師会より突然の中止要請。そう易々とフェスを開催できない状況下、それでも出来る限りの施策のもとで、年末恒例のカウントダウンジャパン(以下、CDJ)が2年ぶりに幕張で開催された。
その2日目、12月29日の様子を簡易的ではあるが、レポートしたいと思う。
まず、会場内に大きな変更があった。ステージは1個、無駄な装飾は除かれ、飲食ブースは例年以上に広かった、その中央に「フェスを止めない、音楽を止めない」と書かれた、巨大な垂れ幕が存在感を示している。これが今の我々の立ち位置であり、現状、思想そのものだという気迫を感じ、荘厳さすら感じた。実際に、動員を縮小し、座席制という前例のない形式で行われたCDJ。入場口ではワクチン接種証明をするために大勢が列をなす。未接種者用に、PCR検査用の入り口もあったが、比率としては10:1の割合、如何に日本でワクチン接種が進んだかを証明する形でもあった。
●打首獄門同好会
冒頭からコロナ禍を憂い、ライブ欲に飢えた観客の気持ちを代弁し、かけがえのないフェス空間の至福感を煽る。いつも通り佇まいは淡々と、しかし激しいハードロックに乗ったリリックたちは、今後やってくるだろうアフターコロナへの渇望と希望を乗せた感動すら覚えるものだった。
●きゃりーぱみゅぱみゅ
「つけまつける -Extended Mix-」「CANDY CANDY -Remix-」など、アレンジされたお馴染みのダンス・チューンは、DJ中田ヤスタカの本領が垣間見れ興味深かった。それらを忠実にステージ上で跳んだり跳ねたりして表現する彼女のアイコニックさにプロを感じた。スティーブ・アオキがリミックスした「にんじゃりばんばん」も格好良かった。
●My Hair is Bad
意外にもCDJ初出場となったマイヘア。雑誌の中だけの世界だと思っていたと言うCDJに出演できた感謝を述べながらも、椎木は変わらず年末の幕張で叫び続けた。いつも通り支離滅裂な言葉の羅列の中に感じる熱いものは、このコロナ禍でも失わない日常に寄り添う「グッバイ・マイマリー」「真赤」「味方」といったロックとして僕らの胸に確かに響いた。
●Cocco
毎回その表現力の深さに感銘を受ける。「強く儚い者たち」「樹海の糸」などの20年以上前のヒット曲が未だに澄んだ鮮度を保てているのは、彼女の歌い手としての現役感から来るものだろう。触れれば壊れてしまいそうな繊細な存在だからこそ、その歌声は菩薩のように寛容で、コロナ禍で辛い時期の聴衆の心に届く。
●マキシマムザホルモン
コロナ禍だろうが容赦はしない前のめり感。制限された現実を吹き飛ばすかのようで、変わらない姿を見せてくれたホルモンと、のっけからヘドバンで答える腹ペコ観衆勢。「これからの麺カタコッテリの話をしよう」ではノリノリだったナヲの珍しいミステイクが重なりながらも、新旧織り交ぜたセトリは正に今回のCDJ掲げるフェスを止めない勢いを感じた。また、モッシュで揉みくちゃになれる日が来ることを。
●MAN WITH A MISSION
「Emotions」「FLY AGAIN」などのお馴染みの曲も、すっかりフェスの光景に定着したと思われるし、言わば出オチのバンドであるのは一目瞭然なのに、新曲が相変わらずスタイリッシュで格好良いのが流石である。ただ、なかなか新曲が定着しないというフェスバンドあるあるな時期に差し掛かっている感もあったので、いよいよ天下無敵のオオカミさん達も正念場を迎えるのかと思っている。
「フェスを止めない、音楽を止めない」と言うのは簡単だ。しかし、情熱だけではどうにもできない過酷な現実の中、それでも文化を絶やさないというのは実際に参加することでしか意思表示できない。そういった面では、今回の参加は正しかったと個人的には胸張って言いたい。CDJ2223があるのだとすれば、その時はマスクを外して、人とぶつかり合いながら体中でロックを感じる、あの日の光景が再び広がることを願わずにはいられない。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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