春から夏に変わろうとしている五月下旬。毎年恒例と化しているMETROCKに今年も行く。このフェスの、個人的な位置づけとしては、これから本格化する夏フェス・シーズンへの心構えをするための準備運動的なフェスと思っている。もっと体力を付けなければ、もっと走ろうと思ったりとか。
今年、残念だなと思ったことが一点だけある。それは、冒頭でアキモトとかいう衆議院議員が出てきたことだ。心底、興醒めした。こういう娯楽と政治は切り離されたものであって欲しいと個人的には思う。政治が介入するものではない。明らかな場違いな立場にある人の登場に違和感を隠せずにいた。
2018/05/27(Sun)
●KANA-BOON
彼らだけに限ったことではないけど、フェス御用達バンドは、いつ何時観ても変わり映えしないことが多々ある。年に全国各地で何百本もライヴを行うだけに仕方ないのかも知れない。しかし、観客はその全てを観れるわけがない。年に一度って場合も当然ある。その中で、どう観客の琴線に触れることが出来るか? そこをおざなりにするか、しないかで、凄まじい速度で淘汰されていくシーンに残れるか否かが決まると思う。KANA-BOONはそんな激流の中でサラッとライヴをやってのける。現代の邦楽ロック・シーンの象徴的バンドとしての余裕すら窺えた。出来れば、久々に旧来のキラー・チューンではない新しい激アゲ楽曲が聴きたいと思った。
●THE ORAL CIGARETTES
今月初旬のビバラでの件がどれほど山中(Vo)の心理に影響したか、おそらくほぼ気にも留めていないと思うが、少々アンチ的意見が目立っていた気もする。勘違い・ナルシストが過ぎるとか。この日は、ここ数年嫌ってほど繰り返してきた「俺らが新しい時代を牽引する」発言が無く、珍しく「俺らは勘違いされやすい」という控えめな発言が印象的だった。個人的には、癖の強さとしては、この程度で調度良い。新曲「ReI」に象徴されるように、自己顕示欲よりも他人の為に歌うオーラルの方が好きだ。また、彼らの音楽は、90年代に大流行したビジュアル系まんまなんだなと思った。時代が違えばド派手なメイクしてたと思う。特にオーラルは編曲が上手い。サビで聴衆が一気に暴れられるように意識して制作されているのは巧みだなと思う。そして、何よりも、いい加減にフェスで「エイミー」が聴きたい。
●ゲスの極み乙女
例の騒動から初めて彼らのライヴを観る。偶然にも前回彼らを観たのも、このMETROCKで二年前のことだった。騒動の渦中でも観客は、そんな下世話なワイドショーネタなんか気にも留めずに騒いでいた。現にファンでも何でもない俺でもサビさえ聴けば全部の楽曲を知っている。その浸透力は凄まじい。ただ、その二年前と比べると断然盛り上がりに欠けていたのに気付く。本当に恐ろしいのは、不倫でのイメージ下落なんかではなく、二年という期間でバンドや楽曲が人の興味を引き付ける力を失ってしまったことだ。激動のシーンである。たかが二年で大きく潮流も変わる。「私以外私じゃないの」というフレーズがキャッチーなものから、「だから何だよ?」ってな具合の意味不明な言葉に成り下がるリアルな質感を感じた。ゲスの極みの負ったダメージがあるとすれば、そういうところだろうと思った。
●フレデリック
KANA-BOONでも言った通りだ。彼らも本当に多くのフェスに出演している。時代の寵児だ。「オンリーワンダー」「オドループ」という絶対な楽曲で盛り上がる光景は何度も観ている。さて、そろそろ次の一手が欲しいという願望を、新曲「飄々とエモーション」で成し遂げたように思う。「オンリーワンダー」の時ような爆発的な何かを感じることは無かったが、確実に進化している彼らの次のステージを何処かで観るのが楽しみになったパフォーマンスだった。
●MAN WITH A MISSION
この日の最高気温は27℃の正しく夏日。着ぐるみの影響もあるだろう。人気と反比例して出演時間が30分と極端に短い。わざわざ最も暑い時間帯にしたのは主催者側のイジメだろうか?(笑)その分、圧縮されたステージだった。この日、稲穂を持った人に次いで、彼らのバンドTシャツを着た人を多く見かけた。相当数のファンがいた。アリーナ公演をなんなくやってのけるモンスター・バンドである。流石のパフォーマンスと、観客のノリが見事な化学反応が成された光景で、今日イチの盛り上がりを見せた気がする。相変わらず「fly again」は前奏から激アガってしまう。
●レキシ
ぶっちゃけフェスで観過ぎた。お決まりのセトリ。ネタ入れ込む場所さえも、何を言うかさえも分かってしまう。その構成自体は飽きてきたといえども、レキシが面白いのは、ふとした瞬間の素の発言なのである。羽田空港が近いから会場上空を飛行機が休みなく飛んでいるが、当然のように弄ったりとか。次の出演がサカナクションということもあり、稲穂を持っていない人に「手を稲のようにして振ってください」と言えば、瞬時に「手稲」→「ていね」→「ていね、ていね~、ていね~に」とサカナクションの「新宝島」にしてしまう。こういうところが池ちゃんが面白い・トークが天才的と言える本質的な部分で好きだ。ワンマンなら、それが炸裂してるんだけどね。そろそろ新曲も聴きたいところだ。
●My Hair is Bad
圧倒的だった。常に全力な椎木が神掛かって見えた。初武道館以上の気迫に満ちたパフォーマンス。椎木のギターを演奏するというよりも体全体で、かき鳴らす姿がカッコ良かった。何を語るかなと思っていた。椎木の思想の根底には諸行無常みたいなものがある。人生の儚さを訴えつつも、だからこそ「いま本気で楽しめよ!」と、叫ぶ。あまりの力の入った叫びに会場が呆然とし静けさが広がる。もう一度、叫ぶと、大歓声が起きる。圧倒されるというのは、こういうことなんだろうと思った。「曲作ってネットに載せれば簡単にスター」「音が鳴ればいつもみたいに踊ってる」まるで今のフェスを取り囲む軽薄さを鋭く突くような言葉に心揺れる。夕暮れから夜になって日が落ちた都心部で、思いの丈を叫ぶ椎木のステージは、とてつもなくドラマチックだった。「アフターアワー」「元彼氏として」「告白」とお馴染みの楽曲をやって、ステージを後にする。アンコールで「いつか結婚しても」を演る。幸せの為の曲と紹介した。椎木ほどエネルギッシュでエモい存在は今のシーンにはいない。その底力を最高な形で表現しきったマイヘアに拍手を!
(文・ROCKinNET.com編集部)
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