2013年の来日時には「これが最後だろう」と誰しもが思っていただろう、私も思っていた。しかし、それから5年の間に3回も生ポールが拝めるなんて誰が想像できただろうか。
で、何が凄いかって御年74歳とは思えないパワフルなヴォーカル。そして、以前から取り立たされているが休憩なし。一滴も水を飲まずに、三時間ぶっ通しで歌い続ける。しかも、ほぼ原曲キーのまま。要は、この5年間68歳から74歳という高齢の期間を過ごしても、衰えが無いのだ。紛れもなく超人である。この人こそが音楽という形無き抽象物の偶像なのかも知れない。いや、そう呼んでも異論はないだろう。
ポールのライヴは、だいたいお決まりのセットリストである。
冒頭からビートルズやウイングスの名曲を演ってから、中盤に「Lady Madonna」や「Ob-La-Di,Ob-La-Da」など盛り上げ曲を投入、終盤は「Band on the Run」「Back In The U.S.S.R.」「Live And Let Die」などのキラーチューンで観客の沸点を最高潮までに上げ、「Let It Be」「Hey Jude」で泣かせ、アンコールは「Yesterday」ではじまり「Golden Slumbers~The End」で閉める。この曲は演ってくれるという安心感と期待感を決して裏切らない。そして、もうひとつの、いや、これがファンとしての最大の楽しみかも知れないが、どんな意外性を取り込んでくるかである。
この日も冒頭一発目が「A Hard Day’s Night」だった。実は、前公演の武道館の外で音漏れを聞いてたので、知っていたのだが、やはりDNAに刷り込まれたレベルの名曲を生で聴く喜びはひとしおだ。
その他「Can’t Buy Me Love」「Love Me Do」「BIRTHDAY」など超有名なビートルズ曲が多く盛りこめられていた、レアな一晩となった。一方でウイングスの「Letting Go」「Junior’s Farm」などコアな楽曲も入れる。もちろん、すっかり定番になってる最新作『NEW』(2013年)の楽曲や、リアーナ、カニエとのコラボ曲「Four Five Seconds」も演り“いま”の自分を見せる。何を聴かせず、何を聴かせるかの選択に、ポールの天才と呼ばれるエンターテナーぶりが垣間見れる。
「キョウモニホンゴガンバリマス」「オッス」「イッショニウタオヨ」など日本語のMCも、どこかおどけていて、「(スクリーンに)日本語の字幕は出るのかな? (会場の反応が無いから)字幕が出るのを待つよ」と会場を微笑ましくする。ポールが年齢に関係なく尊敬以上に人から愛されるキャラなのは、こういう愛嬌からなのだろう。至福な時間はあっという間に流れる。嬉しさ、感慨深さ、純粋な感動・・・ポールを観ていると、いろんな感情で涙する。こんな幸せな音楽体験は、そうできない。心からポールに感謝を伝えたい。
ポールは去り際に「See you next」と再び約束した。この約束は必ず守って欲しい。必ずまた会おう!
image source:http://www.billboard.com/articles/news/6092010/paul-mccartney-postpones-tokyo-concert-after-coming-down-with-virus
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