笑い過ぎてどうにかなっちゃうかと思った。王道のキャッチーなメロディに日本史にまつわる歌詞を乗せるという異色のコンセプト、CMのタイアップ起用なども手伝ってか、加えて、フェス・シーンでも、その芸人顔負けのトーク力と、質の高い音楽を敢えて茶化すハイレベルなクリエイティブ・センスで徐々に稲穂と共に知名度を拡大しつつある池ちゃん。今となっては伝説のバンド、スーパーバタードッグのキーボディストがこのような形で人気を博すなど誰が想像しただろうか?
フェスなんかでも彼のファン以外の若者も1ステージで夢中にさせる。何故、これだけレキシは愛されるのか? それは彼の“好かれ気質”にも因ると思う。当然ながら、話の面白い人間に人は寄り付く。しかし、単なるお調子者ではない。敢えて、ふざける“めざとさ”。根っからの道化師タイプ。近頃の芸人が裸になって股間をお盆でどうのこうのっていうような、笑われるのでなく、笑わすベクトル。MCも当然、楽曲に関してもだ。実力のある人間、地頭の良い人間でないと出来ないことである。こういうのって、日本の音楽史、芸能史に実は昔から受け継がれている。ハナ肇とクレイジーキャッツや、ドリフ、サザン、米米CLUB・・・・・・これらコメディバンドのどれもが、多くの人間を夢中にしてきたように、レキシが受け入れられるというのは実に自然なのである。
そんな歴史の全国ツアー「不思議の国のレキシと稲穂の妖精たち」に参加してきた。もう抱腹絶倒! こんなに腹抱えて笑ったのは何年振りかと言うほどだ。流石である。まずは、ウォルト・ディズニー製作映画の前のお馴染みのイントロ・ムーヴィーが流れると、シンデレラ城ならぬ、日本の古城に花火が上がるパロディ映像が流れる(レキシのライヴが何故、映像化されないのかの由縁はこういうところだ)。いとうせいこうと、みうらじゅんというサブカル界の巨匠が現れれば、レキシと一矢報いる丁々発止のギャグ合戦を繰り広げ、会場を「不思議の国」にいざなう。
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その場で思いついたことを言ってしまって(歌ってしまって)、本来のセットリストから脱線するというお決まりのパターンは健在で、この日も、最新作『Vシキ』の曲を珍しく真面目に歌っていると思いきや、お決まりの他人の曲へ雪崩れ込んでしまうパターン・・・・・・最新曲「KATOKU」から始まった本ライヴだが、歌唱中なぜか工藤静香の「嵐の素顔」の振付(森口博子がやってた物真似Ver)をやれば、「ユアマイソーソー」の方の「A・R・A・S・H・I」になるいい加減さ。凄いのは、それに瞬時にバンドがついていくアドリブ力・柔軟性と、演奏力の高さである。風味堂の渡和久(元気出せ!遣唐使)をはじめとする一流ミュージシャン揃いなだけはある。やはり道化をやるには実力がないと出来ない最たる例がレキシのライヴにある。
その他にも、「刀狩は突然に」は小田和正「ラブストーリーは突然に」に変わるし(しかも、三回も繰り返すし)、「年貢 for you」はチェッカーズ「涙のリクエスト」に変わるし、アンコールの「狩りから稲作へ」は米米CLUBの「君がいるだけで」に変わる。むしろ、変わった後の方が盛り上がる。それを突っ込むレキシ。他人の曲での遊び方が絶妙で上手い!
ロック、ファンク、ジャズ、ラップと多様なジャンルを取り入れたレキシの楽曲の生演奏は、やはりライヴ栄えして、純粋に音楽的なクオリティの高さを感じる。本編ラストの「きらきら武士」なんかは、ふざけも無い圧倒的なパフォーマンスを見せつけられ、彼が本域で売れ線を突き進んだら、どうなってしまうか?(とんでもないことになるに違いない)と思わされた瞬間でもあった。先日、放送された『関ジャム』という番組内で、斉藤和義がレキシを「名曲の無駄遣い」と評したそうだが、まさしくその通りだ。
レキシほどの、遊び心を持った道化(エンターテイナー)は今の日本にはいないと言って過言ではない。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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