3年前2015年の世界ツアーは大傑作『1989』を携えての公演で大ヒット曲も満載、煌びやかにショーアップされていたので否応にも盛り上がらない訳の無い完璧なライヴだったが、自らポップソングの限界を圧倒的な表現と献身的なサービス精神でもって軽々と更新した感じだ。
他の付随を許さない無敵の女性像を確立した気がする!
テイラーは最新作『レピュテーション』で従来のカントリーやポップ・シーンに燦然と輝く歌姫像からのイメージ脱却を果たす。売上的には旧名作との比較では落ち込んだとの分析もあるが、この日のライヴを観れば、テイラーが如何にポップ・シーンの頂に君臨しているかが肌感で分かる最高のものだった。
冒頭は『レピュテーション』の一曲目である「…Ready for It?」で幕を挙げるも、特大スモークと共に登場したテイラーの女王降臨感が半端なかった。もともと180cm近い高身長である、その肉体的な表現力は健在で、観る者を圧倒する迫力すらあったし、花道を歩く彼女の視線は神々しさすら感じた。所々で巨大な毒蛇(コブラ)が登場したように、今回のツアーの最大の課題であった『レピュテーション』の世界観の構築を東京ドームという巨大空間に惜しみも無く表現するのに成功していた。それは、彼女の挑戦でもあった。
最近のテイラーと言えば、カニエ・ウェスト夫婦との確執が大きく取り立たされ賛否を呼んだ。
カニエの「Famous」の楽曲中で「俺はテイラーとセックスするかも(中略)あのビッチを有名にしたのは俺だ」という歌詞を承諾したか否かで。その反論の際に、カニエの妻、キム・カーダシアンに「毒蛇女」呼ばわりされた。敵が毒蛇女と言うなら毒蛇女に徹してやるよというのが今のテイラーだ。
#テイラースイフト
楽し過ぎる!無敵過ぎる!
新譜の世界観を再現しながらも人気曲の見せ方がエゲツないほど多幸感に満ち溢れてて、語彙力ぶっ飛ぶほど最高でした!世界イチの歌姫を自ら証明しちゃった感じ!最高!←さっき言ったか… pic.twitter.com/58JykaXpeI— ROCKinNET.com (@ROCKinNETcom) 2018年11月21日
前回のツアーでは「何事も気にしない!」と陽気にキラキラしながら歌っていた彼女だが、そんなことあって、黒い衣装を纏うなど、多少ダークな一面も垣間見せる。「私、そんなに良い子ちゃんじゃないから」と言わんばかりに。今回のツアーは対照的に本来の自分と周囲の評判とのギャップの葛藤で、もがいた挙句に完成させた自己表現だった。カニエ夫婦への復讐ソングでもある「Call It What You Want」を初めて聴いた時に「なんて強い女なんだ」と脱帽したが、この日のテイラーの堂々たる姿を見たら、相当の覚悟のもとであることに気付く。テイラーは“レピュテーション(評価)”と対峙することに腰を据えていたし、このツアーでそれを貫徹させたと思う。そして、多くの賛同を得たと言っていい。
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実際にこのツアーは90年から計測された全米興行の新記録を樹立している。05年から07年にかけて行なわれたストーンズの「A Bigger Bang Tour」の2億4500万ドル(約280億円)を破り、2億6610万ドル(約300億円)を記録したそうだ。しかも、ストーンズがアメリカでの70公演で当時の最高記録を達成したのに対し、テイラーはわずか38公演でその記録を塗り替えたという。
そして、「You Belong With Me」「Shake It Off」「Bad Blood」など人気曲も取り入れた現在進行形の彼女を示すのに最適な選曲であったが、やはり彼女は究極のエンターテイナーにしてソングライターでもあると感じたのは、旧曲をマッシュアップしていたことだった。アレンジ力が凄まじい。だから、この前のツアーと今回のは、なんて比較は成立しないのだ。誰もが求めているだろう理想形で全ての楽曲を魅せた好きの無さに脱帽した。
『1989』で時代を彩った反動で、自分のストレスを世界に音楽で提示した。一方で、民主党支持発言でアメリカを動かすなど、単なる女性シンガーでは無いことも証明した。影響力が絶大な彼女はどこに向かうのか。自身のストレスと対峙した次の一手は何なのか? 非常に楽しみである。
セットリスト(2018/11/21@東京ドーム)
M-1 …Ready for It?
M-2 I Did Something Bad
M-3 Gorgeous
M-4 Style / Love Story / You Belong With Me
M-5 Look What You Made Me Do
M-6 End Game
M-7 King of My Heart
M-8 Delicate
M-9 Shake It Off
M-10 22(Acoustic)
M-11 Blank Space
M-12 Dress
M-13 Bad Blood / Should’ve Said No
M-14 Don’t Blame Me
M-15 Long Live / New Year’s Day
M-16 Getaway Car
M-17 Call It What You Want
M-18 We Are Never Ever Getting Back Togethe
(文・ROCKinNET.com編集部)
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