コロナ禍の過酷な現実を熱意で吹き飛すような力強いライブだった。
先行きが見えずにモヤモヤしている、センシティブな時代の不安を蹴散らし、明日からの僕らの生活を後押しするような希望のライブ。
2021年6月12日13日の二日間で、それぞれ午前と午後に分かれた(セトリも異なる)計4回のライブをこなすUVERworldらしいタフなパフォーマンス。その初日の午後の部を見た感想である。
「日頃から不満を言ってる奴は、規制が無くても不満ばっか言う。規制や自粛があろうと、自分の範囲でやることをやってる奴もいる」と言ったTAKUYA∞(Vo)が見据えるコロナ禍は、そういったポジティブな機会に見事に変換されているんだと脱帽する。
「REVELSI」で幕を開けた本編。続いて「激動」。昔の曲を嫌うバンドだが、こういった懐かしのヒット曲もたまにやってくれるサプライズが嬉しい。「WE ARE GO」「AS ONE」を挟んで、特に会場のボルテージが一気に上がった感覚を得たのは「LIMITLESS」「UNKNOWN ORCHESTRA」のダンス・ロックの連投だった。
思えば、00年代半ばの曲から、10年代、20年代と世代を超えた楽曲が連なる。キャリアが成しえることでもあり、バンドの奥行きを感じる冒頭の怒濤のセトリに身震いする。
会場の横浜アリーナは入場制限のため満席とはいかないが、10,000人以上はいたんじゃないかと思われる。歓声が禁止された会場は、それでも有り余るパワーと感動を表現しようと、飛び跳ね、拳を突き上げる。その熱気たるや、規制されたライブ会場とは思えないほどで、数々の伝説を作ってきたUVERworldのライブでも特異ながら最たる盛り上がりだったと言って過言でない気がした。
昨年末、新曲「来鳥江」のゲスト・ボーカルについて、とんでもないメンバーだと予告はされていた、そのメンバーとして俳優の山田孝之が明かされ舞台に登場する。滅多に見れない人気俳優の歌唱姿が見れたのも貴重な体験で、売れっ子俳優のスケジュールを抑えるのは至難の業であり、如何に、この日が特別だったか物語っていよう。
また、この日の午前の部では披露しなかったという最新曲「NAMELY」も夜には披露された。生き方や価値観を問う楽曲が多かったUVERworldにして純粋な恋心を歌ったのは久しく、また、珍しい。どこか切ない歌詞と美しいメロディは壮大でセンチメンタルだった。
特攻がふんだんに取り入れられながら「Touch off」「IMPACT」とお馴染みの楽曲で気分も高揚しきる中、アリーナ規模のライヴで特攻もあるライヴを見るのが、実に約2年前であることに気付くと感動もひとしおで、この光景が実現されている事実に様々な思いが巡る。
UVERworldはライヴに意味を持たせる。
男祭りが最たる例だったように、昨年末の日本武道館のライブも、コール&レスポンスをアプリで募集した声で流すなど、有人ライブを如何にして、またUVERworldらしく実現させるか、実験でもあり、バンドの大きなエポックになる試みであったように。
この日のライヴの意味合いを見出せば、TAKUYA∞が自信を持って世に放とうとしている未発売の新曲「EN」の披露であろう。ラストに披露されたのだが、昨年末の日本武道館のライヴでも披露されたが、≪愛を粗末にする奴は/何に勝ったって/一生負け組≫と、真の人生の価値を見出すメッセージと、TAKUYA∞の円熟味増した叫びが、音楽に飢え錆びた胸の奥底に突き刺さる。日本音楽界では、売上とは無関係な部分で、数年に一度、とんでもない名曲が生まれるが、この「EN」は間違いなくリリースされればさらに、日本ロック史に大きな爪痕を残すこと、間違いないだろう。
TAKUYA∞の歌唱力も肉体性も衰えず、メンバーの演奏力も厚みを増し、進化を止めないバンドの姿が眩しかった。決して歩みを止めずに、歩むUVERworldの次のステップが楽しみで仕方ない。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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