昨年から感じていたことがある。それは参加人数が年々増加する一方で、会場の広さは変わらないという反比例。正直、不満も多く出ていたようだ。フェスにとって導線は生命線とも言えるほど重要。ビバラは屋内フェスという特性もあるし課題は大いにあろう。初回時の快適さが懐かしい。自由か? 縛るのか? ビバラは多くの日本のフェスでは禁止されているダイブを許可する特異なフェスでありながら、一方通行がやけに多いなど変なところの規制が厳しいという矛盾も感じる。オーガナイザーの鹿野氏は「ダイブやモッシュを許しているのは、それをする自由も、しない自由も、両者が共存する環境を守るためであり、気遣いが出来ると皆さんを信じているからこそだ」という旨の発言をしていた。言わば観客が試されるフェスでもあるのだ。自由の在り方について非常に考えさせられるフェスである。
2018/05/04
●My Hair is Bad
朝イチから強引に覚醒させられた気分だ。武道館公演以来のマイヘアを観る。あの時は緊張気味でガチガチだった椎木も、今日は良い意味でのリラックスできているように思える。一発目から「アフターアワー」続いて「熱狂を終え」と新旧のハイスピードなリズム楽曲で客席のボルテージの上がり様が凄まじかった。椎木の最大の武器は語りにある。予定調和なMCではない、剥き出しの感情をぶつけてくる。「ロックバンドやって帰りたいと思います!」「芸能人と不倫?女子高生にキス?自分の中の正義、自分の中の悪。どちらも正しいよ!選ぶのはお前だよ!」「俺はここにいるぞ!オメーもそこにいるんだろ!」支離滅裂さが椎木らしく、瞬時に思いついた言葉だからこそ、心の深部にまで響き渡る。「元彼氏として」で再び会場を揺らし、締めは「いつか結婚しても」「告白」という最近のお決まりの流れ。圧倒的に青々しくて、尖っている。椎木の満ち溢れる人間臭さとエモさには毎回脱帽する。
●KEYTALK
現代の邦楽フェスの王者の余裕すら感じるパフォーマンスだった。それもそのはず、もはや彼らは、武道館、横浜アリーナと大きな会場を沸かせた実績がある(そのどれもを観ているせいかバンドが大箱でやってる姿を自然に見れてしまう)。それに比例するように、キラー・チューンも増えていく。盛り上がら無いわけがない。そんな中、彼らの楽曲群の中でも異彩を放つ、妖艶な旋律が印象的な「暁のザナドゥ」の映え方が嬉しかった。こういう僅かな進化が垣間見れるところが彼らの現役感と、無敵感を維持させているのかと思う。お祭りバンドとして確固たる地位を築いているが、たまにはフェスで至極のバラード「バイバイアイミスユー」なども見たいものだ。
●VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
現役のロック・バンドたちが、邦楽史に燦然と輝く名曲を歌うというビバラのオリジナル企画。一昨年くらいから始まり、初回ではブンブンサテライツの故川島氏がhideの「ピンクスパイダー」を歌ったり、KEYTALKがサザンの「勝手にシンドバッド」(義勝(Ba/Vo)が桑田佳祐を敬愛)を歌ったりと、相応に凄まじいパフォーマンスを見ることが出来るが、実は非常に残酷な企画であることにお気付きだろうか? 今年は顕著だった。カラオケで終わるか、プロとしての意地を見せるか? それって歌の上手い下手ではなく、その歌を自分の物に出来てるか、そのオリジナリティの度合いに掛かっているように思える。ヤバイTシャツ屋さんの「One Night Carnival」(氣志團)も、THE ORAL CIGARETTESの山中拓也の「HONEY」(ラルク)も、KANA-BOONの「歌うたいのバラッド」(斉藤和義)も、どれもカラオケ大会で終わった気がする。あれではお金を取る歌唱とは言えない。そんな中で素晴らしさが、際立っていたのは、やはりYUIだろう。スピッツの「チェリー」を歌う。透き通って伸びやかなボーカルは健在だ。昨日のレキシがネタにしていたので、まさかと思ったが自身の大ヒット曲「CHE.R.R.Y」を急に歌って会場が大盛り上がり。その後、Creepy Nutsが「日曜日よりの使者」(ザ・ハイロウズ)をアレンジする技も見事だった。
●UVERworld
限られた時間で観客を盛り上げさせて楽しませることも大変なことだと思うが、それ以上に観る者を感動させ心に何かしらのメッセージを刻むということは至難の業である。しかし、TAKUYA∞にとって、そんなことは容易なことなのかも知れない。今日もTAKUYA∞節が炸裂だ! 「たった六人のメンバーと、数十人のチームスタッフと、数百人のクルーと、一番を取りにビバラにやって来たぞ!」「こんなにフェス楽しみに来たのは、他のバンドに気に入られるために来たわけじゃねえ!何なら生温いバンドが嫌いなんだよ!本気でロックバンドやってるからだよ!」常に自分を貫きストイックに人の為に音楽や想いをぶるけてきたTAKUYA∞らしい本音に思えた。セットリストは「7th Trigger」「一滴の影響」「PRAYING RUN」「IMPACT」と変わり映えはしないのに刺激的なのは、TAKUYA∞の想いが、その時その時で違うからだろう。UVERのライヴに同じものはないという証である。ただ、新曲「ODD FUTURE」をやらなかったのが悔やまれる。ラストの「7日目の決意」の感涙・感無量っぷりは相変わらず最強だ。
●the telephones
復活と聞いて「早ッ!」と思った。二年半ぶりの復活らしい。そういうのは復活とは言わない。小休憩でしかない。解散や活動休止というのは並大抵ならぬ決意の上でするものだ。多くのファンを失望させるかもしれないからだ。だから、そう易々と戻ってきては「意思の軽薄さ?」のようなダサさを感じずにはいられない。相変わらず、騒げばOKなバンドだから、この日のキッズたちの需要にはマッチしていたのだろうけど、このフェスの初回でトリを務めた時の勢いは失っていたように感じる。まだ需要があるという光景だけは素晴らしいと思ったが、一度連載が終わった漫画が復活したことに因る「あれ?」感が拭えないままの復活劇は少々肩透かしを食らった思いだ。どうせなら、石毛輝(Vo)による、他バンドの方が見たかったくらいで。
●THE ORAL CIGARETTES
彼らが所属しているのは「MASH A&R」という事務所で、ここは、このフェスを主催する「MUSICA」をはじめ、「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」の4社共同出資により発足した会社である。これだけの音楽業界有数の会社が集えば、プッシュも凄いだろう。勢いがあるのは十分に体感しているが、彼らがトリと聞いて些か早いなと思ったのも嘘ではない。少し忖度的なものすら感じる。どうも、この日の山中はマイクを投げ捨てたりと感情的でMCも空回っていた気がする(勘違いによりUVERworldを名指しで舞台上でムカつくと発言したり)。急にヒャハハハと変な高笑いもする。こういう芸風だったっけ? キッズたちは大喜びだったが、フェスでの初のトリを務めるという記念すべきステージにしては、彼らの最高のパフォーマンスでは無かった気がする。少々残念な初ヘッドライナーだった。
(文・ROCKinNET.com編集部)
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